"飛貴 、コンビニで牛乳買ってきて !!"
『 ……… また ?』
母親とのメッセージ画面を見ながら溜息をひとつ 。
俺の母はよく物を買い忘れる 。
今回もきっとそうだろう 。
近くにあったコンビニに入り 、飲み物が置いてある棚へ向かった 。
『あった !これだけでいいのかな ?』
スマホを取り出し 、母にメッセージを送ろうとした瞬間 、
「全員動くなっ !!!!!」
突然聞こえた大きな声 。
振り向くと拳銃らしき物を持った男がいた 。
男「動いたら殺すからな !!!!」
隣の客に拳銃を突きつけ 、俺らを脅す 。
『っ 、』
怖い 。
心の中が恐怖で埋もれる 。
男「おい店長 !!今すぐこの店閉めろ」
長「え 、でも …… 」
男「閉めろっつってんだよ !!さっさとしろ !」
長「は 、はい」
店長は慌てながらも店のシャッターを全て下ろした 。
男「閉めたな 。そしたら全員壁の方を向いて座れ」
『 ……… 』
俺は犯人に背を向けて 、ゆっくりと腰を下ろした 。
犯人がこのコンビニに引きこもり始めてから約30分 。
別に何かをする訳でもなく 、ただ引きこもっているだけ 。
一体何をしたいんだろう 。
「 ……… ふふ」
すると 、隣の女の子が小さく笑い 、立ち上がる 。
『えっ !!』
男「お 、おい !なに勝手に立ってんだよ !?撃つぞ !!」
女の子はその言葉を無視して 、犯人の元へ向かって行く 。
犯人の前まで来た時 、女の子は言った 。
「嘘つき 、お疲れ様」
男「はっ ?何言ってんだよ」
「その拳銃 、偽物ね 。バレバレよ」
男「に 、偽物なわけねえだろ !!」
「へえ 、じゃあ撃てば ?」
男「っ 、!」
『あ 、危ないよ !』
「うるさい 、黙ってて」
『すいません ……… 』
って 、なんで謝ってんだよ俺 !!
男だから守らないと !
「ほら 、撃てるんでしょ ?早く撃ちなよ」
男「 ……… くっ 、」
すると犯人は断念したように崩れ落ち 、
「ふふ 、」
女の子は馬鹿にするように笑った 。
『な 、なんで偽物ってわかったの !?!?』
「明らかに撃つ気がない 。というか 、引き金を引けないようになってたから」
『え ……… !!!』
「あ 、瑞稀が待ってるからじゃあね」
そう言って女の子は去っていった 。
『瑞稀 ……… ??』
誰かの名前かな 。
もしかして 、彼氏の名前とか ?
『 ……… やだ』
会ったばっかりなのに 、
初めて話したばっかりなのに 、
どうしてこんな気持ちになるの ?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!