時刻は夜の…2時になりそうな時間だ。
カチッ…カチッ…2時になりました。カチッ…カチッ…カチッ…
僕の部屋にある、花緑青色の時計がそう音を立てている。
紺鼠色のパジャマを着ている僕は、無言で手元にあるコントローラーをカチカチと動かしている。
僕は何を隠そうゲームが好きだ。
だからこそついつい夜の時間帯に、親の目を盗んではゲームをしまくっていた。
今日も、昨日発売されたMMORPGをやり込んでる真っ最中だ。
なんて言ってる間にだいたいクリアは出来ている。まだ、難易度の低い中ボスであり、見るからに弱そうだからだ。
これがまた数十倍強くなったら、作戦を練らなくてはならないのだが、その時間も案外好きだ。
耳が青藤色のヘッドホンで押しつぶされ、赤くなっていた。ヘッドホンを耳からそっと外す。
あれ?
…外から変な声?音?がする。
なんなんだ?女の人の声だな。
そこから10分程経った。
た…? どうしたんだ?
それから謎の女性の声は聞くこともなかった。
翌朝の事だ。
昨夜、午前2時30頃、幻楽市桜志町で女性24歳を刺し殺す殺人事件が起こりました。
まだ犯人は捕まっておらず、凶器には指紋はなく、近くには防犯カメラなどがなかったことから、警察の捜査は難航しております。
そうニュースキャスターは伝えた。
とりあえず帰ったらすぐ寝よう。そう思った。
カチッカチッ…
近くのコンビニなら、ノートは買える。
直ぐに買ってこよう。
ありがとうございました。
そんなことを店員さんに言われた。
ありがとうございました。なんてただの言わなきゃ行けない社交辞令であり、本当はそんなこと思ってないだろ。
そんな馬鹿みたいなことを思っている自分が悲しくなってくる。
そんな変なことを思いながらコンビニをあとにした。
僕は正直怖いのが苦手だ。
だから、ホラゲーだけは出来ない。
いつも怖くなって途中で違う部屋とかに隠れてしまうほど。
男なのに情けないよなぁ…とか言われるけど、男だからとか女だからとかは大っ嫌いだ。
なんだよそれ。もし女がだいたいの人数、怖がりじゃなかったら、怖いとか言ってるの、情けないとでも言われるのだろうな。
僕は常識を押し付けられるのは嫌いだ。
なんて、そう考えて辺りが、ほのかに点滅して、今にも触れただけで消えそうなくらいの街灯に、怖くて泣きそうな気持ちを誤魔化しているだけだ。
…今声かけられたよな。
振り返ってみると、そこには15センチくらいはあるであろうナイフを握った男がいた。
ここは冷静に。そう思ってもほんとうは怖すぎて泣きそうだ。
…ダンッ
とうとう僕は怖すぎて腰が抜けてしまったらしい。まだおじさんでもないのに情けない。
といつもは思うのだろうけど今じゃそんなこと思ってる暇がないくらい、怖い。
なんなんだこの人は。そんな考えだけが頭に回る。
するとひとつのニュースが頭に浮かんだ。
なたは、あの殺人犯?そう聞きたかった。
ダンッ…
腰が抜けてしまった僕に床ドンをし、僕の肩の近くに手を置かれ、身動きが取れない。
ナイフで刺されそうだ。
まだ、死にたくない…
こんな時にMMORPGをもっと攻略したかったなんて思える僕は、自分でも馬鹿だと思う。
さよなら僕。スローモーションになる。まるで時が止まってるくらいゆっくりだ。
…ダッ
ナイフは僕の首スレスレのところで刺さっている。
僕、い、きて、…る?
僕…いき、て…?
殺人犯は、直ぐに走り去ってしまったようだ。
僕は立ったと思ったが、膝から倒れた。
僕は何を言っているのか分からない。だけど、ロシア語だと言うのは分かった。
…
最後に聞こえたのは、車の音。それ以外記憶はない。
僕はどこにいるの。
何があったんだ?
だんだん2人の声が鮮明に聞こえる。
女はそう言うと、火をつけた。
花火に火薬を使っているのもあり、近くにあった火薬に火は引火してしまった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。