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第1話

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2018/07/17 07:24
最悪なのです…

蛍光灯が砕け、薄暗くなった鉄臭いむせかえるような臭いが充満する部屋に床に散乱した何かとそれの中央に立つ少女がいた。少女は艦娘。電と呼ばれる駆逐艦だ。しかし、彼女は艦娘の制服ではなく、黒い戦闘服を着込んでいる。頭部にはヘルメットを着用している。


世界は深海棲艦に海を奪われて、はや数年。艦娘たちが生まれても数年が立った。だが、そんな中、一人だけで活動している艦娘がいるという。俗に言う単独兵だ。しかし、その艦娘は艦娘が生まれたきっかけを作った一人の駆逐艦なのだ。

何故、彼女は独りで行動することになったのか……

最初は大本営直属の特殊作戦部隊という裏仕事の部隊にいたが謀反の疑いで解体されそうになった。が、抵抗し大本営は致命的な損害を被った。そして、その一人の艦娘を手放した。大本営はそのようなことが二度と起きないように各地に鎮守府を建てた。そして、提督たちが配属された。建前は深海棲艦の撃滅と海を解放するという名目だが…本当はその一人の艦娘の注意を反らすただの囮でしかないのだ。
それを知らずに提督たちは艦娘を指揮している。中にはブラック鎮守府などと呼ばれる所があるが、その鎮守府の詳しい場所や現状が少しでも漏れるとその鎮守府は壊滅的な攻撃を食らう。今までにいくつの鎮守府が消えたのか……詳しい数は分からない。しかも、犯人は大本営は一人の艦娘と仮定しているが証拠もなく、提督会議などでは深海棲艦のせいだと言う声もある。
そう、彼女は本当はどうしているのか誰も分からないのだ。分かるのは彼女だけかもしれない………

「…最低な鎮守府は本当に最低ですね」
電は床に転がっている赤黒く変色した男の頭と思われる肉塊を軽く蹴る。
そして周囲を一瞥する。周りには手斧で切り刻まれた艦娘たちの死骸が散乱している。電の手には刃零れし、赤黒い染みと赤黒い水が滴る手斧が握られていた。
「……たす……け…て……」
電の足元の一人の艦娘が手を伸ばす。軽空母の瑞鳳だ。脚は膝下から切り落とされ、全身にいくつもの切り傷が付けられている。這いつくばって、電に助けを求める。
「…お前を助けてもメリットが無いのです」
電はそう吐き捨てると、手斧を振り上げる。瑞鳳の顔が絶望に歪む。
「やめ…待っt」
瑞鳳が最後の言葉を言い切る前に頭に手斧が振り下ろされ、手斧がめり込む。頭から血を吹き出しながら瑞鳳はそのまま顔から地面に倒れ込む。手斧は深くめり込んだため、簡単に引き抜くことは出来ない。電はそれを分かっていて、瑞鳳に手斧をめり込ませた後、すぐに手を離した。
「最後は綺麗に火葬してやるのです。感謝して欲しいのです」
部屋の扉を開け、外に置いてあった二リットルのガソリンタンクを掴み部屋に戻る。そして、蓋を開け中に入っているガソリンを部屋の中にまんべんなく巻く。
「後は火を点けるだけなのです」
電は部屋を出て、戦闘服のポーチから葉巻とライターを出す。そして、既に先端を切っている葉巻を咥え、ライターで火を点ける。

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