雨上がりの銀座の街は、少し空気がヒンヤリしていた。
お礼は改めて、と挨拶を済ませた二人は、多田珈琲店を出て滞在先へと向かった。
大通りを行き交う人々は相変わらず多く、珍しくアレクがげっそりしている。
多田家で洗濯してもらって乾いたばかりの洋服を着たテレサは、アレクの後ろに続きながら、通りに面した和菓子屋を物珍しそうに見つつ、悪気なく答えていた。
その言葉にハッとしたテレサが前を見ると、振り返ったアレクの赤い目は、お説教モードに入っていて、いつも以上に赤く燃えて見えた。
女王になられるのですから、と言いかけたが、周囲の目を気にして続きを吞み込む。
それだけは、低い声で伝えた。
心から反省したテレサは、しょんぼりして答える。
丁度そこは和光前の交差点で、信号待ちでアレクと並んで立ったテレサは、隣でお母さんに手を引かれて立っていた子供が自分を見上げているのに気付き、反射的にニコッと笑い返す。
すかさず
とアレクに問われ、
と背筋を伸ばした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。