銀河大学付属恋ノ星高等学校にテレサとアレクが転校して二日目。
校門脇に植えられた大きな桜の木も、薄紅色に輝いている。
在校生達が好奇心いっぱいで遠巻きに見ていて、「例の転校生?」「可愛い~!」「日本語、話せるんだって」と噂をする中、二人は登校してきた。
テレサは桜の花を見上げて
と微笑んでいるが、アレクは頷き返しながらも辺りを警戒していて、特に異状がないことを確認しつつ正面の校舎へと向かった。
恋ノ星高校の生徒の大半は電車通学だが、近隣の銀座や日比谷、築地などから歩いて通学する者も少なくない。
グランドパレス銀座からも、歩いて二十分程の距離だった。
だからそこに部屋を決めたんだと、昨夜、レイチェルが電話で二人に説明してくれた。
昇降口に入って、笑ったテレサを見て、アレクも頷き返した次の瞬間──
と呟く声と、よからぬ事を想起した怪しい視線を察知し、踊り場へ鋭い視線を向ける。
そこに立っていたのは多田と伊集院だったが、その背後に、眼鏡をかけた神経質そうな顔の男子生徒が素早く姿を隠した。
結果、アレクの鋭い眼光を、バッチリ浴びてしまった伊集院がびびっていると、テレサが明るく手を振ってきた。
ほっとした伊集院は、喜んで大きく手を振り返す。
多田も「よ」と無表情に手を挙げた。
その後ろからこっそり姿を現した眼鏡男子は、改めて微笑んだテレサを見つめて、呟いた。
とてつもなく耳がいいアレクの耳にその声も届いていたが、悪意はないのでやり過ごし、テレサと連れだって教室へと歩き出した。
その様子を、長い髪を三つ編みにして一つにまとめ、赤い眼鏡をかけた真面目そうな女子生徒が、じっと見守っていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。