第7話

ティラミスは苦かった。
248
2018/10/01 04:41
ティラミスを食べに行くって約束をして、その当日。


待ち合わせ場所まで、よしかがついてきてくれた。
矢神よしか
矢神よしか
なんかまた来なかったりして
新島都
新島都
そんなわけないって。大丈夫だよ
矢神よしか
矢神よしか
心配だなぁ〜。私、いつものカフェにいるから。なんかあったら呼んでね。
新島都
新島都
うん。
この答えは正解なのか、不正解なのか、
神様は解答用紙を返してくれないから、わからない。
待ち合わせ時間の13時まであと20分。




公園の時計の下で、胸を膨らませていた。
新島都
新島都
まだかなぁ〜。
そんなに早く時間が経つ訳でもないのに、時計をすぐに見てしまう。
15分前
隣で待ち合わせをしていたであろう男女が対面してどこかへ流れて行った。



いいなぁ、カップル。

私はいつか誰かとあぁなるんだろうか。
男の人は腰に手を回し、女の人は腕にもたれかかる。
いいなぁ、
10分前
さっきまでベンチで絵を描いていた人がいなくなった。


風景画でも描いていたのだろう。

絵の具やパレットなどの道具を雑にしまいこんで、

私に軽く会釈をして帰って行った。


きっと綺麗な絵がかけたと思う。
5分前
昼食をとっていた家族が遊び始めた。


男の子の蹴ったボールを父親らしき人が蹴り返す。

母親らしき人はそれを編み物をしながら優しい瞳で見つめていた。
そして13時
しんは来なかった。
13時を何分まわっても来ない。
14時、15時、16時……
時間はどんどん過ぎていった。


雨が降り始めて、私はびしょ濡れになった。
寒くなったから、ひとりでティラミスを食べようと、


約束していたお店でティラミスを買って、ひとりで食べた。
新島都
新島都
苦い……。
ティラミスは、苦かった。

プリ小説オーディオドラマ