隆弘side
都が心配になって、夕方、ティラミスの店まで走っていった。
雨が強くて傘を二人分持った。
よしかは笑いながら大丈夫、大丈夫って言ってるけど、どうかわからないので、ひとりで探すことにした。
さしている傘はほとんど意味もなく、
肩が濡れている。
これまでにないほど無表情で、目をどこに向けているかもわからない。
彼女はゆっくりこちらに目を向けた。
その目に表情はなく、何にもうつしていなかった。
しんのためにオシャレをしたのか、
いつもより服も可愛くて、髪の毛も巻いちゃって、
おまけに絶対にしない化粧まで。
まぁグロス程度だけど。
自分を責める癖。
前と同じだ。
壊れてしまった。
冷血の対象は、この世の全ての男子になってしまった。
もちろん、その中に俺も含まれている。
二度と前のような都には戻らないような気がした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。