第10話

#10
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2021/12/08 12:33
スタッフ「あなたちゃん入りまーす!」
あなた「本日はよろしくお願いします!」

あれから私たちは何事もなく仕事をしていた。増田さんの家にお泊まりしたこと、朝帰りだったこと、全てバレずに仕事をしている。
ファンの子達を裏切るような真似をしたことは申し訳ないと思い、もう二度とあんなことにはならないようにと気をつけている。

スタッフ「この番組、2回目ですね」
あなた「そうですね〜、今日の撮影も楽しみです」
スタッフ「我々も楽しい撮影になるように頑張りますね」
あなた「はい!」

この番組は、増田さんと共演したのが初めてだった為、今日で二回目ということになる。スタッフさんもMCの芸人さんもみんな優しくて撮影しやすい。アットホームな番組だ。

スタッフ「増田さん入りまーす!」
増田「よろしくお願いしまーす。…あ、あなたちゃん発見」
あなた「今日もよろしくお願いしますね」
増田「うん、よろしく」
スタッフ「あれ、もしかしてそこ出来てる感じですか?(笑)」
増田「見えます?(笑)」
スタッフ「増田さんが女の子と絡んでるの珍しいからな〜!見えますね!」
増田「え!心外!俺女の子とも絡みますよちゃんと!」
スタッフ「嘘だ〜!」

スタッフからのおちょくりにも上手く受け答えする増田さん。
あー、こういうとこ好き。質問されたことから自然と内容変えられるとこ、すっごく好き。
増田さんは「ね?」と私にアイコンタクトをとった。

あなた「増田さん、席どこなんですか?」
増田「あ!話変えたな?…えっと、俺の席はね…ここだ、あなたちゃんの斜め後ろ」
あなた「近いですね」
増田「そう?初共演のときのほうが近かったと思うけど」
あなた「え、私は今の方が近いと思います。…気が合わないですね(笑)」

どれだけ親睦を深めても、気が合わないということだけは変わらなかった。唯一、香水の匂いだけ。

やがて他の共演者さんたちも合流して、いよいよ撮影が始まった。

司会「さて今週のゲストは〜!人気沸騰中の女優、あなたちゃんでーす!」
あなた「よろしくお願いしまーす!」
司会「早速ですが、あなたちゃんは今行きたいところはありますか?」

今回のトークテーマは「行きたいところ」。
また増田さんがなにかふっかけてくるんじゃないかとドキドキしたが、最初から私に発言権が与えられたので変な心配はいらなかった。

あなた「あ〜、ワンピースが欲しいので洋服屋さんに行きたいですね。あとマカロン食べたいからケーキ屋さん(笑)」
増田「服なら俺が選ぶけど!」
あなた「自分で選びます!増田さんセンス独特なので!!」
司会「あはは!(笑)まっすー振られちゃったね」
増田「独特…」

ああ!悲しい顔させた!ごめん増田さん!!あとでケータリングにあったマカロン分けるから許して…!!

と私は心の中で思いつつ司会の人から出される質問に次々答えていった。

司会「あなたちゃんはドラマにも出演してましたけど、共演した俳優さんとはどうなの?仲良くしてるの?」
あなた「まっったくしてないです!(笑)恋愛ドラマで恋人役になった人と本当に恋人になるとかあるらしいんですけどね〜、私はまったく無かったです」
司会「だそうですよ!あなたちゃんの隣まだ空いてるそうです!」
あなた「やめてください!!(笑)」

こんな調子でトントン拍子に撮影が進み、無事全てを終えることが出来た。私は最後に共演者さんたちに挨拶をしてから楽屋に戻った。

…予想以上に、疲れたな…。

─今とある撮影が終わりました!📸 放送日は後日発表なのでみんな楽しみにしててね〜🎶
撮影後で顔がブスなので、自撮りじゃなくてケータリングのマカロンの写真を載せておきます😋💞─

ぽち、と親指で送信ボタンを押すと、早速返信が来る。返信欄には、増田さんのアイコンの方も増えた気がしないでもない。

さて、次の仕事があるから準備しなきゃ。

なんて意気込んだ直後、ノックが3回。

あなた「どうぞ〜」
増田「やっほ」
あなた「どうかしましたか?」
増田「ケータリングのマカロン余ったから分けに来たんだよね」
あなた「え、増田さん食べないんですか?」
増田「ちょっとした仕事のために体作り中」
あなた「え、えぇ!?!?」

ちょっとした仕事とは…!?!?
それまだ未解禁情報ですよね大丈夫です!?!?

増田「まぁ、その仕事はまたFCメールでいくと思うからまだ秘密ね。それよりあなたちゃん、口開けて」
あなた「口、ですか?…あー」
増田「あーん♡」
あなた「!?!?!?」

ぽん、と口に入れられたのは黄色のマカロン。大きさが小さいので丸々一個口に入ったがそんなことはどうでもいい。あの増田さんから、あの、あの増田さんから「あーん」をされたのだ。私の脳は一瞬にして使い物にならなくなり、一瞬にして元に戻った。

増田「ふは、なにその顔(笑)」
あなた「ふぁふあふぁんが〜」
増田「なんて言ってるか分からないから飲み込んでからにして(笑)」
あなた「っ…増田さんが驚かせるからー!」
増田「女の子はこういうの好きかと思って」
あなた「大好物ですけど!!!」

必死になって答える私に増田さんは腹を抱えて笑っていた。いや笑い事じゃないですけど。

増田「あなたちゃんこれから仕事?」
あなた「2時から雑誌の撮影があります」
増田「じゃあそれ終わったら夜ご飯行かない?」
あなた「ぜひ!」
増田「じゃあ前行ったお店で。俺先に入ってるから終わったらそのままおいで」
あなた「なんだか申し訳ないですが」
増田「俺は待つの好きだし、こっちのほうが効率いいでしょ?」
あなた「…そう、ですね。じゃあ終わったらLINEします」
増田「はーい。頑張ってね」
あなた「ありがとうございます。行ってきます」

私は胸に楽しみな気持ちを抱いて、仕事へと向かった。

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