第8話
#8
私は時計を見て慌てた。
え、時間経つの早すぎでは…推しとの他愛もない時間永遠に続いてクレメンス…。
なんて不安定な心持ちで、でもなにも言わずに居座っているのもおかしいので私は言葉を発した。
あなた「私、そろそろ帰りますね」
増田「明日仕事?」
あなた「ああいや、明日はお休みです」
増田「じゃあ、もう遅いし泊まっていけば?」
あなた「とま…っ!?!?!?」
ななななな、なに!?!?なんで!?!?
あからさまに動揺している私のことをキョトンとした顔で見つめる増田さん。
いやいや、あなたおかしいですよ。ついこの間知り合った女を家に泊めるとかなに仰ってるんすか…。
増田「あれ、なんかおかしいこと言った?…あ、めちゃくちゃおかしいこと言ってるかも」
あなた「そそ、そうですよ、ようやく気づいて…」
増田「あなたちゃん、着替えないじゃんね」
あなた「そういうことじゃない!!」
増田「ふはは!敬語抜けてるよ(笑)まあ敬語なんて使わなくてもいいんだけどさ」
先程から、恐ろしい言葉を連発していますが!?確実に落としにきてますよねその発言…!
増田「…もしかして、なんかやましいこと想像してる?」
私の顔を覗き込んでイタズラに笑う顔。
もうだめ。この人私を殺す気でいるわ。ええ死にますとも。死ねる…。
意地悪な質問に可愛く返せる余裕なんてない私は、増田さんの肩を軽く押して
あなた「…簡単に女の子を泊まらせちゃダメですよ…期待しちゃいますから」
増田「あなたちゃんは期待してる?」
あなた「そ、れは…」
期待。してないなんて、断言出来ない。なぜなら、私は増田さんのファンだから。頭ではわかっていても少しの期待は抱いてしまう。
増田「安心してよ。俺、彼女じゃない子には手出さないから」
あなた「増田さんをそんな酷い人だとは思ってません…!」
増田「でも期待したでしょ?(笑)」
あなた「増田さん、面白がってる?」
増田「ふは、半分当たり」
増田さんはまたイタズラに笑ってから、私の手を握って
増田「好きな子はいじめたくなっちゃうの」
と言った。
私は火が出るほど顔を赤らめて、目を逸らした。
あなた「…そんなに言うなら、お風呂お借りしますからね!」
私は照れ隠しで増田さんに強気に言い放った。
増田さんは笑顔で頷いて、お風呂の場所を教えてくれた。
私は自分の言ったことに激しく後悔した。
あれじゃあ、増田さんの言ったことを肯定したも同然じゃないか。…諦めよう。もう過去には戻れないのだ。
お風呂は暖かかった。