「せーとかいちょー」
「……」
「ねーねー、ねぇってばぁー」
「……あーもう!うるさいです!少し黙っててくれませんか?!」
「やーだ」
数日前の生徒会選挙
私はそこで生徒会長に選ばれたのだ
「せーとかいちょー せーとかいちょー」
これは先輩なりの祝い方
大切な課題を進めているというのにずっと話しかけてくる
「私 教室でしよっかな…」
「だめ!」
独り言は聞き逃さない模様。
「私がひとりぼっちになっちゃうよ?いーの?いーの???」
かわいいなぁ
こんなことを思う私は、きっと重症
「ふぁ〜……だる…」
きゅん
恋の病はしんどい
「先輩、ここ教えてください」
「んー?あーここね。ここはこの公式を……」
先輩は頭がいい
ずっと昼寝してるわけじゃないんだとか
テストでは毎回10位以内に入ってるとか入ってないとか
「先輩は頭いいんですよね?大学、どこ行くんですか?」
そういえば、前にこんな質問したことあったな……
「行かないよ」
「え?どうしてですか?」
先輩はいつもの調子で言った
「だってつまんないんだもん。好きなこととかないし、高校だってこんな感じでサボってばっかだし」
先輩はまた昼寝をしようとした
「学校って嫌い。大人が個性を潰して“いい学生”を量産させてる所が特に」
「ふふ、なんですか それ」
「でもさー、実際そうじゃん?あ、首席ちゃんにはわかんないか」
「…嫌味ですか?」
私はムスッと眉間にシワをよらせた
「へへ、バレた?」
「先輩だって頭いいじゃないですか」
「勉強はできても道徳性?生活力っていうの?…そういうのは壊滅的だからさー」
「だから大学行かないんですね」
「そーそー」
「留年してもいいんですよ?」
「んー、それはさすがにないかなー」
「…あっ!私、何言って……失礼ですよね。すみません」
「謝んなくていいよ、私も出来るもんならしたいし」
「へ?」
「最初は 早く卒業したいなーとか、学校辞めたいなーて思ってた
だけどね」
先輩はむっくり起き上がって私の方に顔を向けた
「なおちゃんと出会っちゃった」
ドキン
先輩はなんでこんなことを言うんだろう
私のこと好きじゃないのに
勘違いさせないでよ……
「そういうことは好きな人に言ってください。私に言っても……
まさか、口説いてるつもりですか?」
私は笑顔で言った
つもりだった
ツーン
鼻の奥が痛い
鼻を殴られたような。なんていうか、ジーンってする
「…ハハ なおちゃんは私のこと鈍感って思ってそうだけど、なおちゃんも十分鈍感だよ」
先輩は意外にも悲しそうな困ったような顔で笑った
「じゃあね、今日は帰るよ」
「先輩っ?」
「ばいばーい」
バタンっ
屋上に風が吹いた
さっきまで2人でいたこの場所は一気に冷たくなった
先輩は太陽に好かれてて、陽の光が暖かいと言うけれど 私は太陽に嫌われてるみたい
雲は 太陽を隠した
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!