河内くんと改札を通って、チラッと後ろを見ると、藤間くんが改札前で立ち尽くしていた。
体を支えられるように、背中に手を回されて、顔が近づく。
相変わらず笑顔なのに、やっぱり怒っているように感じる。
それが怖いのに、顔が近くて胸の音がうるさい。
答えあぐねていると、河内くんはパッと手を離した。
河内くんの表情が固まる。
河内くんのことは、元々整った顔でかっこいいとは思っていたけど、
最近はそういうのじゃなく、やたらとかっこよく見える。
多分、恋のせい。
そこまで言いかけて、ピタッと止まる。
とっさについた嘘は、バレなかっただろうか。
あのノートを見られたら、私の気持ちがバレてしまう。
ホームに向かうために、階段を上がる。
今日も河内くんは、私の遅い足取りに合わせてくれる。
*
日曜日になり、朝から沙耶ちゃんと出かけるために、お気に入りのウエストマークワンピースに着替えた。
*
お昼に入ったお店で、冷たいドリンクのストローに口をつけながら、沙耶ちゃんに問いかける。
沙耶ちゃんは、運ばれてきた可愛いプレートを前に、スマホで写真を撮っている。
ガチャンとグラスがテーブルにぶつかって、大きな音を立てた。
その時の味は、よく分からなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。