第21話

会いたくて、声が聞きたくて。
2,923
2021/08/27 04:00
沙耶
沙耶
ほんっとうに、ごめんね!
葉山 日菜
葉山 日菜
大丈夫だよ。ママから呼ばれたんでしょ? 気にしないで
沙耶
沙耶
もう! 今日は日菜と遊びに行くって、ちゃんと言ってあったのに
沙耶
沙耶
ごめんね、また明日!
葉山 日菜
葉山 日菜
うん、気をつけてね
今日はこれから、沙耶ちゃんとふたりでショッピングモールに行く予定をしていたのだけど、
昼過ぎに沙耶ちゃんのママからスマホに電話があって、早く帰りなさいとのことで、
街中でお開きにすることになった。
葉山 日菜
葉山 日菜
(本屋さんにでも行こうかな)
葉山 日菜
葉山 日菜
(ひとりでショッピングモールに行ったって、つまらないし)
スマホを取り出して、画面を見つめる。
今日はずっと、頭に引っかかっていることがある。
葉山 日菜
葉山 日菜
(河内くん、本当に、誘ってくれようとしたのかな)
もし、万が一、本当にそうだったとしても、先に約束をしていたのは沙耶ちゃんだったから、どっちにしろ断ることにはなっていたけど。
葉山 日菜
葉山 日菜
(声が聞きたい)
葉山 日菜
葉山 日菜
(いきなり電話したら……迷惑だよね)
トークアプリを開き、河内くんとのメッセージ履歴を見る。
河内くんとメッセージのやり取りをしたこと自体が少ないし、自分から送ったことは一度もない。
指で画面をタップして、深呼吸。
葉山 日菜
葉山 日菜
(……えいっ!)
葉山 日菜
葉山 日菜
『今、電話してもいい?』
メッセージを送るだけで、息切れがすごい。
葉山 日菜
葉山 日菜
(迷惑だったら、どうしよう)
メッセージに既読がつく。
葉山 日菜
葉山 日菜
(……ううん。河内くんは、そんなふうに思うような人じゃない)
と、思ったのもつかの間。
スマホから着信音が鳴り響いて、手のひらから落としそうになってしまった。
葉山 日菜
葉山 日菜
(電話!)
葉山 日菜
葉山 日菜
もっ、もしもし……!
河内 恭介
河内 恭介
もしもし、日菜?
初めての機械越しの声は、なんだか変な感じがする。
葉山 日菜
葉山 日菜
(耳元に、いるみたい)
河内 恭介
河内 恭介
どうした? 今日は、友達と出かけてるんじゃ……
葉山 日菜
葉山 日菜
うん、そうだったんだけど、沙耶ちゃん用ができちゃって。今、ひとりなの
葉山 日菜
葉山 日菜
あっ、だからって、暇つぶしに電話したかったとかじゃなくて
葉山 日菜
葉山 日菜
河内くんの声が、聞きたくなって……
葉山 日菜
葉山 日菜
(あれ? この言い方、変なふうに思われる……?)
河内 恭介
河内 恭介
今、どこ? 家?
葉山 日菜
葉山 日菜
ううん、外に……
河内 恭介
河内 恭介
それなら、駅まで行ける? いつもの場所
葉山 日菜
葉山 日菜
う、うん。ここから10分くらいだし
河内 恭介
河内 恭介
俺も、今から行くから
葉山 日菜
葉山 日菜
えっ? あ……
電話が切れた。
葉山 日菜
葉山 日菜
(わざわざ外に出てくれるのかな?)
河内くんは、「いつもの場所」としか言わなかったけれど、私はまっすぐに西口へ向かった。
私たちの秘密の場所は、ここだから。
彼の姿は、まだない。
ベンチに座って、折りたたみミラーを見て、前髪をさわった。
声が聞ければ、それだけで充分だと思っていたのに。
ドキドキ、ソワソワする。
葉山 日菜
葉山 日菜
(少しだけ、勇気を出してみてよかった)
葉山 日菜
葉山 日菜
(早く会いたいな)

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