第3話

3.
294
2018/07/04 08:21
その日の夜。



お風呂もすませて寝ようと思っていた時、
ドアをノックする音が。
あなた

はーい?

ドアを開けると、



淳太
あ、あの…
目の前には淳太くんが。
あなた

どうしたの?

私はなるべく目線を合わせられるように屈んだ。
すると、
淳太
えと、…ね、寝れなくて…
淳太くんは恥ずかしそうにそう言った。
それもそうだ。初めて来た場所でひとりで寝ろと言われているのだ。少し無理があったな、とひとり後悔した。
あなた

ごめんね、ひとりにしちゃって…

頭を撫でながら同じ布団に入る。


_______________。
あなた

…淳太くん、敬語使わなくていいんだよ?これからは家族なんだから

淳太
家族…
ボソッと呟いて少し辛そうな顔をする。


淳太くんは両親が死んだわけでもないし、虐待を受けていたわけでもない。はっきりと覚えているんだ、前の生活のことを。
あなた

辛かったら泣いていいんだよ?弱いところを見せたって全然かっこ悪くない

優しい声でそう言うと泣き出した彼。

淳太
パパ、ママ…
あなた

パパとママはちゃんと淳太くんのことを考えているから、大丈夫だよ

お金の話は小学生にはまだまだはやい。


_______________。
ひとしきり泣いた後、ウトウトしだした淳太くん。
あなた

…今日はお姉ちゃんがいるから安心して、

淳太
あなた
あなた

…ぅえ?

淳太
…家族なんやったらあなたって呼んでもええやろ?
ふふっ、と八重歯を見せながら笑う。
あなた

うん、もちろん

淳太
じゃあ、俺のことは淳太って呼んでよ
パパとママにそう呼んでもらってたから、
嬉しそうに話す彼を見て私も微笑み返した。


あなた

…淳太、

淳太
なぁに?
あなた

もう遅いから寝よっか

彼の頬を撫でてやるとくすぐったそうに笑をこぼす。
淳太
うん、そやな
あなた

…おやすみ、淳太








これが1度目の春の出来事。


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