黒を基本とする落ち着いた雰囲気の個室は一目では誰も焼肉屋だとは思わないだろう。シーンと静まった個室に2人。張り詰めた空気の中、俺が口を開くと同時に顔をマヌケに崩した男を殴らなかったことを褒めていただきたい。
そう。俺は今、高級焼肉店にぼんと2人で来ていた。
目の前の男は俺の話など興味無いのか、肉を食べることに夢中になっている。
焼肉を代償に相談を受けてもらおうと企てたのは俺だが、相談相手を間違えたかもしれない。心の中で溜息をつきながらオレンジジュースを喉に流し込む。
由々しき問題だよ、と頭を抱えながら話す。
やまとなら初日で抱くレベルまでいってると思ったのにと心底驚いた声を漏らすぼん。おいやまとをなんだと思ってるんだ。
馬鹿だろ、と呆れた視線を俺の顔から手の中のスマホへと移す男にだから相談してるの!と半ば逆ギレで言葉を返す。
あんな端正な顔立ちが近づいてきたら逃げてしまうのはあるあるだと思う。多分。
社長の不幸は飯が美味しいけど鈴木大飛の場合は友達なんでね、とぼんが続ける。
いつもキスを避けた時に困ったように笑うやまとの顔が頭をよぎる。
え〜と、といじっていたスマホを机におくぼんの言葉を待つ。
やまとの顔がド好みの俺からしたら目をそらさないなんて無理ゲーだ。。恥ずかしいにも程がある。ちなみにどれくらい無理かって言うとひゅうががシルクくんにスマブラで勝つぐらい無理
実際やまとが距離を詰めてきて俺が数歩後ろに下がるなんてことは日常茶飯事だ。動画なら上手くできるのに。
だぁぁあ、と顔を手で覆い隠しながらもそうだよな、よしと腹を括る。俺は、
仮にも仕事仲間兼親友に自分の恋人に対しての行動を宣言をするのは少し恥ずかしくて、じんわりと顔が赤くなっていく。
ニヤリと悪戯が成功した子供のように自分のスマホを俺へと見せてくるぼん。そこにはやまとと通話中、という画面が照らし出されていた
いつもより低めの落ち着いた声が電話越しに名前を呼ぶから変な返事をしてしまった。
俺に拒否権は無いのか、ツーツーと通話が終わったことを知らせる音だけが部屋に響く。ぼん、おまえ、やりやがったな。じっとぼんを睨んでみるが特に効果はないようで、ぼんは笑顔を崩さない。
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電話から数分後にガチャガチャと音を立てながら個室に入ってきたのは俺の恋人であるやまとだった。
ぼんとやまとが会話をしているのをいいことに忍び足で逃げようとしたがもう遅い。じゃ、俺ん家行こうかとファンの子が倒れそうなほど眩しい笑顔で俺の肩へと手をのせるやまとに大人しく従って焼肉屋を後にした。
広々としたソファに男2人が距離を縮めて座ってるなんて傍から見たら酷い光景だな、とぼんやりと考える。
ふと意識を戻すとやまとの顔が残り数センチ、という所まで近づいてきていた。思わず距離を取りたくなるがぼんと約束をした手前、気合いで体を動かさないようにする。
どうしてあんな誓いを立ててしまったのか。目を逸らそうにも逸らせない状況にそっと冷や汗が流れ落ちる。
すすす、と優しく俺の腰と顎に手を回すやまと。こういうところがモテる男って感じがするよなぁ…
心臓がバクバクとうるさいしなんだか痛みまで感じてきた。多分顔はりんごのように真っ赤になってるだろう。それ程までにこの男の一つ一つの行動は俺を掴んで離さない
あぁ、ほんとにずるい。勝手にすればいいものを、わざわざ許可を取ってくるあたり、ほんとうに。
真っ黒な瞳がじっとこちらを見つめてくる。いつもなら恥ずかしさを誤魔化すために出る小言がひとつも出てこない。あぁ、やまとと俺の攻防戦、やまとに軍配あり。
ギュッと目をつぶるとふっ、とやまとが笑った声が聞こえた。笑うな、と目を開こうとした時にチュッと小さなリップ音が部屋に響いた。
恐る恐る口を開くとやまとの舌が俺の口内に入ってきた。
ビクッと固まった俺を他所にやまとはゆっくりと俺の口内を責め立てる。
数秒だったかもしれないし数分だったかもしれない。そろそろ息がもたない、と思うと同時に名残惜しそうに唇が離れていった。
はっ、はっと浅い呼吸を繰り返してる俺とは違って余裕そうなやまとがニンマリと笑っている。なんだかずっとやまとが主導権を握っていて余裕なのが気に食わない。ずっと恥ずかしかったキスも、今ならできたんだ。
あっちゃんかわいい、と未だに表情を崩さないやまとの後頭部へと手を回し、そっとキスをした。
さっきのキスに比べたらお粗末なものだし、子供がやるようなキスだけど、目の前の男には効果があったようだ。
自分でやっていてなんだが顔が赤くなっていくのがわかる。静まり返った部屋ではやまとがプルプルと震えながら下を向いている。
はぁ?、と声を漏らした時にはもう遅い。トンっとソファに押し倒されてしまった。
ぅーー!とじたばたと暴れる俺を見て優しく微笑みながら顔を近づけてくるやまと。あー、だからお前の顔は俺にとって!
______________________効果は抜群だ!!end.
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まず更新が急に遅くなり申し訳ない🙏💦私事なのですが職場でコロナ感染者がでてしまい...そのまま濃厚接触者になり私自身もコロナウイルス感染者になるという事態が起きてました😔今はバッチリ治ったのでこれからまた更新出来ればなと思います !まぁそんなことは置いといて、
雪様のリクエストからキスの攻防戦をする❤️🧡でした...!
果たしてこれは攻防戦なのか..?とにかく❤️君の顔面が大好きな🧡くんが出来上がってしまった。笑
最近の動画でも供給がありましたね〜✨❤️🧡偉大なり...
改めてリクエストありがとうございました🙇♀️
そして長くなりましたが読んで下さりありがとうございました☺️✨
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。