キーンコーンカーンコーン。
あ、チャイム鳴っちゃった。これ予鈴だよね?ねえ、そうだよね?なんてことを考えつつ、僕は教室に戻る。教室はがやがやしていた。良かった。予鈴だ。
さっき話してたのは中川燐那。僕と同じく吹奏楽部1年にしてサックスパートのパートリーダーを務めている。…ってあれ?僕の自己紹介をまだしてない?そっか。じゃあ1回僕の自己紹介するね。
僕は榎本奏太。中学1年生で、吹奏楽部打楽器パートのパートリーダーをしている。僕はピアノとかを習っていた訳では無いが、親が趣味でドラムをやっていて、その影響で僕も打楽器だけはできるのだ。楽譜もドラムとかのは読めるけど、音符がまともに読めないから鍵盤楽器系は大嫌い。でも、1回ドラムをやったら先生がむちゃくちゃ褒めてくれて、何故か流れでパートリーダーになってしまった。
そんな僕に対して燐那は、幼い頃からピアノを習っていて(もう辞めてしまったが)、全てにおいて天才的な音楽センスを持っている。確か小学2年の時に既にエリーゼのためにを弾けていたし、歌もうまいし、仮入部の楽器体験の時なんかには、全部の楽器の音が綺麗になっていた。楽器によっては、そのパートの1年生より上手いと思ってしまうくらいに。
まあ、それだけできることは先生もわかっていたらしく、楽器が決まった瞬間にパートリーダーになった。サックスパートの先輩も、いつ抜かされるかわからない、とそわそわしているレベルだ。そういえば最近燐那フラジオ(サックスの最高音、出すのが難しい音)当たったらしい。今5月の下旬だから、当たるとか最強なんだよな。とにかくそんな訳で、燐那は天才だけど、天才すぎて気味悪がられていたり、距離を置かれている。僕もそんなに友達はいないがそれは僕の人間性─マイペースなところ─のせいなのでしょうがない。でも、燐那はただ人より楽器ができるだけで距離を置かれてしまうのだ。同学年にも、先輩にさえも。まあそれだけ天才児ってことなんだけどね。
で、さっきの話。をしたい所だったんだけど、本鈴がなっちゃった。また授業終わりにでもするね。次は国語だって。眠っちゃうよ。
それじゃ、ばいばい。また後でね。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。