もう一人のマネジメントスタッフの富岡さんにも連絡をいれてみる。やはり富岡さんも冬堂さんと連絡がつかず困っているようだった。
背筋がぞっとする。冬堂さんは車で移動している。交通事故とかだったらどうしよう。
テレビトキオに駆けつけるとロビーにいたルリくんが走り寄ってきた。
わたしはルリくんを連れてスタジオに走った。
ルリくんの出番は15分くらいなのだが、実際は1時間以上拘束された。それが終わると今度は歌のレッスンに行かせる。
どことなく不安そうな顔でルリくんはうなずいた。ふわふわの茶髪とまっすぐ見つめてくる目のせいか、ちょっとポメラニアンぽい。
ルリくんを見送ってから、わたしは思いついて、スマホでスケジュールアプリを立ち上げた。このアプリではわたしのスケジュールのほか、冬堂さんやタクミたちのスケジュールも管理されている。
アプリにはスタッフやタレントたちの今日の予定がシンプルな記号や数字で書き込んである。たとえばわたしなら12ー13T・ラジオ、13T・M社ポスター、14ー18T・麻生スタジオ、19T・サクラTVといったふう。数字は時間、Tはタクミのことだ。
冬堂さんのページにもびっしりと予定が書いてある。
8ー10R・取材、10ー12ST6311、13ー15R・テレビトキオ・終了後麻生スタジオ……。
これを見ると冬堂さんはちゃんと13時にはR、つまりルリくんとテレビトキオに行く予定になっている。ということは13時から14時の間のST、ここでなにかあったということだけど。
わたしはタクミに電話した。
タクミの言葉がとぎれた。しばらくしてから、
わたしはスマホでもう一画面あけて、サンシャインタウンの63階を検索した。
わたしは63階に入っている会社一覧を読んだ。
タクミはそっけなく返事をした。
タクミの答えは早かった。なんの感情も感じられない声にちょっと腹が立つ。
タクミがなにか言い掛けたけど無視して通話を切る。
わたしは池袋の街にそびえ立つサンシャインタウンを見上げた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。