あなたヒョンが圧をかけるように強い口調で兵隊に問いただす
なんでシヨ二ヒョンは手紙を書いたのに本人には会わないんだ?
手紙の中身は見てないけど、あなたヒョンがわざわざ出向くくらいだ
それだけ重要なことが書いてあったはず
なのになんでシヨ二ヒョンは出てこないんだ
門兵は急に下を向いてクスクス笑いながら
低い声で話し始めた。
それはとても不気味で背筋が凍ってしまうほどだった
あなたヒョンもそれほどまでとはいかないが
戸惑っている様子だった
異界の人間を…利用して………殺す?
異界の人間ってもしかして僕達?
シヨ二ヒョンは僕たちを殺そうと?
嘘だそんなわけ…
う、嘘だ…シヨ二ヒョンが
僕たちを騙して…殺す…?
なんで…………どうしてよ………
あの優しさは嘘だったって言うの?
違うことに気を取られすぎて
姿が変わった兵隊に気づかなかった
あれは、タル国から逃げ出す時にいた悪魔だ…
あ、またあの黒い魔法…ボク…今度こそ…
次の瞬間見えたのは黒い煙だった
確かに魔法は放たれたはず爆発音だって聞こえた
なのに、痛みは全然しない
ヒョンの昔噛まれたという方の左目は
いつもの綺麗なオーロラ色の瞳とは全然違い
赤い瞳に染って、変な模様が浮かんでいた
さっきまでいた魔族はいなくなっていて
ヒョンの手からはプスプスと炎が残っていた
あまり敵意を見せると良くないからと言って
近くまでは来ず少し遠くで待機してた親衛隊の兵士が
ものすごい速さでやってきた
あなたヒョンは少しふらついてるがまだ表情に余裕があった
急ぎ足で森の中を小さい馬車で戻っていく
あと出発するだけというとこで再び禍々しい魔力を感じる
馬車の中から外の様子を見てると
10人程度の悪魔がこちらへ飛んできていた
この人数は少しまずいかもしれない
親衛隊のもつ鞭が馬を打つと馬はものすごいスピードで走り始めた
少し走りが安定したところでヒョンは出口の小さな窓から
馬車の屋根へ上がり、悪魔のいる方へ向き直った
肩にポンっと手を置くとヒョンは見えなくなってしまった
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!