私がモカを飲んでぼーっとしている時だった。
優響さんが唐突に口を開いた。
嬉しそうに言う優響さん。
この喫茶店は会社に行く前のサラリーマンやOLの方、それから会社帰りの方と社会人が殆どの為、珍しいなとは思う。
それに何処の女子高生もそうかも知れないが、百合園高校の女子は特にパフェやパンケーキ、タピオカ、クレープのような可愛くて甘い物が大好きなのだからより珍しい。
この喫茶店に来ると疲れを癒すため、ぼーっとしているのが殆どの為、全く気が付かなかった。
他人に然程興味が湧かず、適当に返答する。
「馴れ合うのは御免かな...」と頬杖をついた。
優響さんが私の手を見つめる。
其処には大きなガーゼが貼ってある。
私が会釈程度に頭を下げると、
「いいんですよ」と笑顔で優響さんは言ってくれた。
其の時、丁度 来店ベルが鳴り響いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!