コトっとフォークを置く。
食べ終えた後もセンラさんはニコニコしていた。
顔が整っているので、キラキラした笑みが余計に際立っている。
私は珈琲を口にしてふぅっと息を吐く。
私は少し苦々しい顔をして問うた。
目の前の天女のような輝かしい笑みを見ると、更に顔が苦くなる。
センラさんが私に興味をもっているのかなんなのか知らないが、私はその言葉に顔を引き攣らせた。
「知りたい」
その言葉に戦慄する。
損得でその言葉を言っていないことはもう分かっている。"情"や"気の迷い"だと、皆が言った。
話すことにいい事なんてない。
荷物を全て手に持ち、慌てて席をたった。
鞄から財布を取り出すと、急いでカウンターに向かう。
私の異変に気付いたのか、特に何も言わずに優響さんはそれだけ言ってくれた。
本当に勘も洞察力も性格もいい人だと思う。
ドアを開け、ベルが鳴った。
いつもより荒いベルの音が。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。