「愛鈴、もう二年生だね」
久しぶりに喫茶店に来て、深春とお茶をしていた。
深春はパンケーキを口に入れて、
目をキラキラさせている。
余程美味しかったんだろうな。
「二年生とか実感ないね」
「そう?」
「うん」
二年生になったら部長にならないといけない。
三年生が引退したら、投票が始まる。
画力は上げたし、後輩と仲良くしたらいい。
上手くやらないと。
深春といるために。
「ねぇねぇ、二年生では同じクラスになれるかな?」
「なりたいな」
深春を近くで見ていたいな。
「同じクラスになったら、すぐに部活行けるね」
「ふふっそうだね」
同じクラス…か、夢みたいだね
「ぁあ…まじかぁ…」
「…しょうがないよ、深春」
同じクラスにはなれなかった。
「…じゃあ、また今度の部活でね?深春」
「あ……そっか」
正直、深春は成績良い方だというわけではない。
お母さんは成績が良くない人とは関わるなって
言ってくるから。
部活がある日は、門の方から一緒に並んで歩ける。
先生達って言うのはよく友達とかの話を
親にしてくるから、あんまり校内で喋れない。
「またね」
「うん、またね~」
始業式が終わり、教室に戻った。
私達にとって新しい教室は新鮮だった。
ロッカーに何も入ってないっていうのも見慣れない。
私の席は後ろの方だった。
……隣が深春だったら良かったのに。
そんなことを考えているうちに、教科書が配られた。
これを持って帰るのだと思うと憂鬱だ。
他にも袋はあるけど、重さは変わらない。
何冊かロッカーに入れて良いのが幸いだ。
「…」
皆、友達と帰るのかな。
「深春は誰と帰るのかな」
…部活に早く行きたいな。
「ただいま」
私は家のドアを開けて、靴を揃えて
私は自室に入った。
「おも…」
何日かにわけて持って帰れたらいいのに。
さ、塾に行かないと。
今日も夜まで塾がある。
頑張らないとね。
「あ、お母さんお帰りなさい」
「ただいま」
「塾行ってくるね」
「わかったわ」
制服のまま私は外に出た。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!