第4話

いいから! 許してください!


 私の言葉なんて聞こうとせず、第一志望を考え直せと言う椿つばき先生は、私をどこか突き放しているように感じた。


 そのせいもあり、私は本屋を出てから普段のように先生に話しかけることができなかった。


 けど、先生は電車に乗ると自然に私の腕を掴み、一つしか空いていない席に座らせてくれる。


月島旦陽
月島旦陽
あ、ありがとう!
月島旦陽
月島旦陽
(自然に座らせてくれるなんて、さすが椿先生! ……優しい)
椿湊詞
椿湊詞


 無愛想ぶあいそうな返事だけど、それもいつも通りこと。

 いつも通り過ぎて椿先生がなんであんなことを言ったのか見当もつかない。

 何を考えているのか疑問に思い、私は目の前で立っている先生を見上げる。

月島旦陽
月島旦陽
(外をボーっと眺めている椿先生もかっこいいなぁ~)


 先生を見ているとそんなことばかり考えてしまい、何を考えているのかなんて全く読めない。

 あんなことを言われた後でなければ妄想を膨らませているところだけど……。


月島旦陽
月島旦陽
(本当に、急にどうしたんだろう?)


 今更止めるということは、何かちゃんと理由がありそう……。

 さっきは否定されてるみたいに感じたけど、あの時、先生は私にやりたいことがないか聞いてきた。

 その言葉を信じるなら、私の将来を心配してくれているのだろうけど、自分ではない何かに気を向けさせようとしているようにも聞こえた。

 その場合の止める理由といえば、同じ大学に来られたら困る、とか。



 私に来られたら困る理由って、彼女ができた……とか。

月島旦陽
月島旦陽
(そ、そんな、まさかね?
さすがに飛躍ひやくしすぎだよねぇ?)
椿湊詞
椿湊詞
ほら、降りるよ
月島旦陽
月島旦陽
あ! はい!


 嫌な予想しかたたず、私は一度考えるのをやめて電車を降りた。




 ちょうどいい時間に家に着き、すぐに授業が始まる。

 いつもならはかどる妄想も今日は調子が悪く、気を抜くと嫌な予想をしてしまいそうで私は大人しく勉強に集中した。





椿湊詞
椿湊詞
じゃあ、今日はここまで。明後日はこっちの参考書使うから
月島旦陽
月島旦陽
はーい
椿湊詞
椿湊詞
……珍しいな
月島旦陽
月島旦陽
え? なにがです?
椿湊詞
椿湊詞
旦陽あさひが一回も妄想せずに授業終えたの初めてだ

 椿先生はそう言うと、私の様子を伺うようにじっと見つめてくる。
椿湊詞
椿湊詞
……もしかして
月島旦陽
月島旦陽
わかった!!!
椿先生、私が妄想ばっかするから合格ラインまでいけるか心配してるんだ!!
椿湊詞
椿湊詞
やっぱり、さっきの気にして――
月島旦陽
月島旦陽
大丈夫!! 私、椿先生と同じ大学行けるならいくらでも頑張がんばれるから!
椿湊詞
椿湊詞
いや、そういうことじゃ――
月島旦陽
月島旦陽
今度の模試もしでA判定出すよ!!
それならいいでしょ!?
椿湊詞
椿湊詞
話聞け。確かに、旦陽の妄想癖もうそうへきは心配してるけど――
月島旦陽
月島旦陽
そうだよね、この前も言ってたのに私それでも妄想止まらなかったし……。それで信用を下げるのは自業自得だよね……
椿湊詞
椿湊詞
お前さっきから気味ぎみに話進めて、……わざとか?
月島旦陽
月島旦陽
いいから!
A判定取ったら許してよ!
椿湊詞
椿湊詞
わざとだなぁ?
だから、そういう話じゃなくて


 私は先生の口から理由を聞くのが怖くて、勝手に荷物をまとめて押し付けた。

月島旦陽
月島旦陽
聞きたくない!
もう、私模試に向けて勉強するから!
また明後日お願いします!!


 先生の背中を押してドアの前まで追いやると、先生はドアノブに手をかけてくれる。

椿湊詞
椿湊詞
ま、模試で良い点とるのは止めないけど、志望校はちゃんともう一度考えとけよ


 くぎを刺すようにそう言って、椿先生は部屋を出ていった。

月島旦陽
月島旦陽
……大丈夫、だよね?