第2話

世話焼きな毒舌イケメン家庭教師
5,962
2020/02/27 10:53


 私は、すでに勉強道具がそろえてある机に紅茶のカップ置き、椿つばき先生と私の椅子をぴったりと隣り合うように並べてから座った。

月島旦陽
月島旦陽
椿つばき先生、どうぞ!
椿湊詞
椿湊詞
あぁ、じゃあ、数学からな。今日は宿題出てる?


 椿先生は何事もなかったように椅子いすを離して座り、たくさん付箋ふせんが貼ってある教科書をかばんから取り出した。

月島旦陽
月島旦陽
もうっ! なんで椅子離しちゃうのぉ~!!
椿湊詞
椿湊詞
はいはい、落ち着け駄々っ子だだっこ。いいから教科書ひらけ。あと宿題は?
月島旦陽
月島旦陽
あ~ぁ、宿題なんてないよ~だ
椿湊詞
椿湊詞
なら、この前の続きからな。授業はどこまで進んだ?
月島旦陽
月島旦陽
えっとー、ここ


 そのまま授業は始まり、椿先生は教科書の問題をわかりやすいように補足ほそくを書き足しながら教えてくれる。

 その時、椿先生が少し体を寄せて私の教科書を指さす。

 触れそうで触れない肩、ノートをのぞこうと急接近する横顔、ふわっと香る椿先生のにおい、ノートにつづられる綺麗きれいな字。

月島旦陽
月島旦陽
(椿先生、全部かっこいいなぁ)


 思わず見惚みほれていると、椿先生のひとみが私をとらえた。







     。○。○。。○。○。。○。○。



椿湊詞
椿湊詞
そんなに俺のことを見つめて、悪い子だな
月島旦陽
月島旦陽
ご、ごめんなさい。椿先生から……目が離せなくて
椿湊詞
椿湊詞
集中できない悪い子には、お仕置きをしないとな?


 妖艶ようえんな笑みを浮かべた椿先生は、大きく男らしい手を私のほおに添えた。

月島旦陽
月島旦陽
お仕置き、ですか?
椿湊詞
椿湊詞
あぁ、目つむって


 彼の整った綺麗な顔がゆっくりと迫ってくるの見届け、私はまぶたを閉じる。




     。○。○。。○。○。。○。○。






月島旦陽
月島旦陽
そんなっ、椿先生ったら!!


 あまりのずかしさに両手で顔をおおい、足をばたつかせていると……。

椿湊詞
椿湊詞
なに堂々と妄想もうそうしてんだ。勉強中だぞ?


 椿先生の大きな手が私の頭を鷲掴わしづかみ、ギリギリとにぎりしめていた。

月島旦陽
月島旦陽
いーっ! ごめんなさっ! いたっいたたっ! これホント痛いからっ、やめっ!!!
椿湊詞
椿湊詞
仕置きしてるこっちの身にもなれ。手が……、心が痛い
月島旦陽
月島旦陽
今おもいきり手って言ったよね!? そこまで言ったらもう言い直さなくていいよ!?
椿湊詞
椿湊詞
キレッキレのツッコミどうも。じゃあ、その勢いで説明聞き逃した問1やろうか
月島旦陽
月島旦陽
うっ……、え~っと


 前にやった公式の応用だというのは見てわかり、私は何とか答えをひねり出して書いていった。

月島旦陽
月島旦陽
こう、ですか?
椿湊詞
椿湊詞
はぁ、ハズレ。
けど、途中までは合ってる。ちゃんと聞いてなかったにしてはいい線いってるよ。当てはめるのはこっちな
月島旦陽
月島旦陽
あー、なるほど! 問2やってみていい?
椿湊詞
椿湊詞
どーぞ


 私が解きはじめると、椿先生は肘をついて飽きれたようにため息をついた。

椿湊詞
椿湊詞
旦陽あさひはさ、飲み込みいいし、やればできるんだから、せめて勉強中は妄想するの我慢がまんしろ
月島旦陽
月島旦陽
それはっ! 妄想するのは許してくれてる!?
椿湊詞
椿湊詞
するなっていってもするだろーが。あきらめだ、察しろ。これ以上悪化したらもう教えないから
月島旦陽
月島旦陽
うぅ~、辛辣しんらつだぁ~! けど、ちゃんと気を付けるから教えてください~


 こんなことを言ってるけど、椿先生は何やかんや私を見捨てたりはしない。


 勉強が全くできなかった中学の時でさえ、椿先生は私に根気強く教えてくれた。

 私のことを「顔がいいだけの馬鹿」とののしったお母さんや中学の同級生とは違う。

 それに、辛辣なことも言われるけど、椿先生って意外と世話好きなんだよね。

椿湊詞
椿湊詞
まぁ、今年は大学受験控えてるんだから頑張れよ


 そういうと同時に、私の頭をふわりと軽く撫でてくれる感触がした。

 すぐに手は離れていってしまったけど、あたたかい感触が触れられたところに残っている。

月島旦陽
月島旦陽
うん!! 椿先生と同じ大学行くんだから! 今まで以上に頑張るよ!!







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