第12話

椿先生の夢はなんですか?


 椿つばき先生にちゃんとあやまることができた次の日、食欲も戻った私は朝食をしっかりと食べ絶好調ぜっこうちょうで登校した。

 しかし、学校に着くと、私が歩くたびに人が後ずさっていき変にけられた。

河野聡子
月島つきしまさんは極道ごくどうの娘で昨日の校門にいた人はむかえに来た婚約者こんやくしゃだとか、やばい人とズブズブの関係だとか、怪しい事件に首を突っ込んでるとか……。もう、根も葉もないうわさでもちきりよ
月島旦陽
月島旦陽
あはは! すごい、ドラマみたいだね!
河野聡子
もう、笑い事じゃないわよぉ!


 椿つばき先生の言う通り、私の変なうわさが流れていた。全然気にならないと言ったらうそになるけど、さとちゃんはいつも通りそばにいてくれる。

 今までの私だったら焦っていたかもしれないけど、今の私にはさとちゃんがいてくれるだけで十二分に嬉しい。








 学校も終わり、椿先生の授業中にその話をしてみると、先生も「いい友達じゃん。大切にしな」と、言ってくれた。

 椿先生とのわだかまりもなくなり、学校でのこともたいした問題じゃない。

月島旦陽
月島旦陽
(ちゃんと考え始めなきゃ)
椿湊詞
椿湊詞
じゃあ、今日はこれでおわり。
何か質問は?
月島旦陽
月島旦陽
あ、授業のことじゃないだけど……、一つだけ
椿湊詞
椿湊詞
ん、なに?
月島旦陽
月島旦陽
大学考えてみたんですけど、やりたいことが思いつかなくて……。
椿先生は、どうして猫野大学に決めたの?
椿湊詞
椿湊詞
んー……まあ、俺の家は裕福ゆうふくじゃなかったから国公立は絶対だったね。一人暮らしもできないから家から近いところ。あとは、法学部があることかな
月島旦陽
月島旦陽
……そういう理由だったんですね。
じゃあ、なんで法学部にしたの?
椿湊詞
椿湊詞
弁護士になってお金稼ぐためかな。
将来、家族に不自由な思いさせたくないから
月島旦陽
月島旦陽
すごい……、椿先生はそんなとこまで考えて大学決めたんだ
椿湊詞
椿湊詞
まぁ、夢のある理由じゃないけどね
月島旦陽
月島旦陽
そんなことないよ!!
将来の家族をおもっての素敵な夢じゃないですか!
椿湊詞
椿湊詞
……っ
月島旦陽
月島旦陽
うーん、けど、将来自分のためになりそうなやりたいことって……、改めて考えてみると思いつかないですね
椿湊詞
椿湊詞
……そんな難しく考えなくたっていいよ。
今まで聞いたことないけど、夢とかは?
月島旦陽
月島旦陽
え? 椿先生の彼女ですけど
椿湊詞
椿湊詞
あー、はいはい。
まぁ、前にも言ったけど、お前なら大体のとこは今からでも行けるだろうし、そこまで焦んなくたっていいよ


 そう言って椿先生はかばんに教材をしまい、ドアノブに手をかけた。

 私は見送ろうとしてと椿先生の後をついていったが、階段の途中でピタリと先生は立ち止まった。


月島旦陽
月島旦陽
あれ、どうしたんです?
忘れものですか?


 椿先生はゆっくりとこちらを振り返り、私に手を伸ばした。

椿湊詞
椿湊詞
手、出して
月島旦陽
月島旦陽
え!? そ、それは……







     。○。○。。○。○。。○。○。



椿湊詞
椿湊詞
また少しの間、旦陽に会えないのが急に寂しいんだよ
月島旦陽
月島旦陽
わ、私も!!
いつも椿先生に会いたくてたまらないです!!
椿湊詞
椿湊詞
うん、だから少しだけ。
旦陽に触れさせて




     。○。○。。○。○。。○。○。






月島旦陽
月島旦陽
椿先生から私に触れたいだなんてっ……。
そ、そんなこと言われたら、私も緊張しちゃいます
椿湊詞
椿湊詞
あぁー、また自分の世界入ってるな。
まぁいいや、……はい、これあげる


 そう言って椿先生は私の手の上に横長の封筒ふうとうをのせる。

月島旦陽
月島旦陽
……これは?
開けてもいいの?
椿湊詞
椿湊詞
どうぞ


 封を開けると、中にはかわいいイラストがえがかれた遊園地のチケットが2枚入っていた。

月島旦陽
月島旦陽
え……これって
椿湊詞
椿湊詞
旦陽の自業自得だけど、ストレス溜めさせちゃったからね。
お詫びみたいなもの。
旦陽のお母さんにも許可は取ってるから、
息抜きに聡子ちゃんでも誘って遊んでくれば?
月島旦陽
月島旦陽
え、え!?
つ、椿先生と行くのはダメなの!?
椿湊詞
椿湊詞
俺?
俺と行ったってつまらないでしょ。
せっかくなんだから友達と――
月島旦陽
月島旦陽
お、お詫びなんですよね!?
それなら、椿先生と行きたい!!


 椿先生は仕方なそうな顔をして笑うと、私の頭をわしゃわしゃと雑に撫でた。

椿湊詞
椿湊詞
ま、そう言うと思って一応予定は空けてたからいいよ。
あとで連絡するから、またね
月島旦陽
月島旦陽
は、はい!!
待ってますね!