第13話

遊園地で初デートなのに……


 夏休み間近の今日、私は椿つばき先生と約束の遊園地へ来ていた。

 空いっぱいに広がる青、吹き抜けるそよ風は気持ちよく、まさにデート日和びより

 2人で約束をして遊園地に行くなんて、デート以外のなにものでもない。

 祝・椿先生と初デート!

 しかも、遊園地に入ってから椿先生とずっと手をつないでいるこの状態じょうたい、恋人同士にしかみえないはず。

 ……たぶん、手を繋いでいるのは、人混みで私が迷子にならないようにするためだけど。

月島旦陽
月島旦陽
(それでも幸せすぎる!!
そう、……幸せ……なんだけど)


 実は、少しうつうつとしていた。




 進路変更について椿先生は「あせんなくたっていいよ」なんて言っていたけど、そんなの気をつかってくれているだけだと思う。

 この遊園地だって、おびって言っていたけど、椿先生がそこまで気にする必要なんてない。調子をくずしたのだって、勉強以外のストレスがまっていたのだって、全部自業自得じごうじとくなんだから。



 こうやって気遣ってくれているのに、私は未だに何も決められていない。


月島旦陽
月島旦陽
(こんな状態で遊んでていいのかな……)


 少しうつむき気味に考えていると、椿先生と繋いでいた手が、くいっ、と引かれた。

椿湊詞
椿湊詞
危ないから前見てな
月島旦陽
月島旦陽
あ、はい!


 隣を歩く椿先生は横目で私の様子を伺っていた。

 どの角度から見ても椿先生はかっこいいなぁ、なんて見惚れそうになっているとすぐに視線は逸らされ、椿先生はまた人で溢れている前方に目をやった。

椿湊詞
椿湊詞
……もしかして、気乗りしない?
月島旦陽
月島旦陽
え……、あ、楽しいですよ! 椿先生との初デートだもん!
椿湊詞
椿湊詞
……そ


 そんな私の答えに椿先生はピクリとも口角を上げず、なにかを考えている様子だった。

月島旦陽
月島旦陽
(っ! ……まさか、椿先生っ!)







     。○。○。。○。○。。○。○。



椿湊詞
椿湊詞
せっかくの初デートでも、旦陽が楽しそうじゃないなら悲しいな
月島旦陽
月島旦陽
そんなっ! 私、本当に嬉しいんですよ! 楽しいに決まってるじゃないですか!
椿湊詞
椿湊詞
なら、もっと旦陽の笑顔がみたいな
月島旦陽
月島旦陽
つ、椿せんせぇっ!!




     。○。○。。○。○。。○。○。







月島旦陽
月島旦陽
(そうだよね……、気を遣わせてばっかで申し訳なさいっぱいだけど、
私が暗いんじゃもっと気を遣わせちゃう!)
月島旦陽
月島旦陽
椿先生! 私、あれ一度乗ってみたかったんです!
ほら、行きましょ!
椿湊詞
椿湊詞
……ふっ。
はいはい、転ぶなよ




 ジェットコースターに、メリーゴーランド、コーヒーカップ。どのアトラクションも苦手そうだったり、ずかしくていやがりそうなものばかりだったけど、椿先生は色んなものに乗りたがる私のお願いをすべてかなえてくれた。


 ひとしきり乗りまわり日も落ち始めたころ、私たちはメルヘンなわた雲のベンチで休憩していた。

月島旦陽
月島旦陽
椿先生、遊園地好きなんですか!?
椿湊詞
椿湊詞
ん?
好きでも嫌いでもないけど、あんまり来ないかな
月島旦陽
月島旦陽
そうですよね!
椿先生って遊園地似合わないもん!
椿湊詞
椿湊詞
は?
帰りたいの?
月島旦陽
月島旦陽
あー、ごめんなさい!!
そうじゃなくて、それなのに一緒に来てくれたのうれしいなーって思ったんです!
椿湊詞
椿湊詞
ま、今日は特別ね


 椿先生はそう言うと同時に私のかたに頭をのせて寄りかかった。

月島旦陽
月島旦陽
へぇあぁっ!!??
椿湊詞
椿湊詞
うるさい。
さすがにちょっと疲れたから10分寝させて
月島旦陽
月島旦陽
え、けど……、こ、このまま?
椿湊詞
椿湊詞
すぅ……すぅ……


 ふるえる声を精一杯せいいっぱいしぼり出して聞いてみても、聞こえてくるのは規則きそく正しい寝息だけだった。


 本当に寝ているのか確かめようと肩に目をやるが、長いまつ毛とフルーティーな甘い香りしかわからない。




月島旦陽
月島旦陽
(つ、椿せんせぇ可愛い……心臓が持たないよーーー)