《テオくんside》
何気なく、と言うより
いつもの癖で誘ったことが原因だった。
インドアで少人数が好きだからって
今回も断られる、と、思ったんだけど。
海、2年ぶりぐらいかも、と呟くじんたん。
確かにじんたんは
一昨年の夏の撮影以来、と言ったところだろうか。
夏特有の、というか海特有の
じと〜っとした湿気が強めの暑さ。
羽織っていたシャツを脱ぐ。
あれ、テオくんまた細くなってる、と
いつものメンツが騒ぎ立てた。
暑すぎ、とみんなも肌を露出していく。
となると気になるのはやっぱり " 愛方 " で。
わざわざ口で浮き輪に空気を吹き込みながら
視線がじんたんを追っていく。
ぶかぶかめのTシャツを
何の抵抗もなく、無防備に脱いで。
なんで今まで海断ってきたんだよ、というほどに。
わ、じんたん白〜、となったのは言うまでもなく。
呑気にそんなことを言っている、が。
さっきから気が落ち着かないのは、きっと。
自分でも少し分かってしまうぐらい
妬みの入ったような声でそう言ってしまった。
素直に着るのはいいんだけど。
適当に言った言葉は
結局 " 言い訳 " としか効果を成していなかった。
独り占めしていたいんだよ、ずっと。
2人の時はもっと可愛くなることなんて
俺が1番知ってるんだけど、さ。
隣に、Tシャツを着て
膝を詰めてしゃがむじんたんがいることに
幸せを感じた。
普段とは少し違う独占欲を、
夏のせいにして。
.
なんか思ったのと違った選手権第1位、
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。