第66話

怖い※Ω
1,977
2018/02/19 11:25
《☆イニ☆side》



テオくん
…ん、はあっ、はっ、
床に座り込んで
立っている俺の服を握りしめているテオくん。



そうやって今テオくんを苦しめているのは



" ヒート "
☆イニ☆
ほらテオくん、薬飲んで?
もちろんテオくんは俺の番だ。



でも何もしてやることができない。
テオくん
やだっ、も、無理っ、
そう言って眉毛を八の字にしてせがんでくる。
テオくん
おねがっ、じんた、んっ、
テオくんは俺のパーカーの胸元を両手で掴んで
顔を引き寄せてきて、強引に口付けをされた。



俺はもとからΩに惹き付けられにくいのか
あまりヒートに対して敏感に反応しない。



だけど今は、今だけは
身体の体温がどんどん上昇していくのがわかる。



慌ててテオくんを引き離した。
☆イニ☆
駄目だよっ、
その時、テオくんの悲しそうな瞳が映る。



まるで、



" 怖いんでしょ? "



そう言われてるような。



確かに、言っちゃえばもちろん、



____怖い。



理性を捨てて本能のままにテオくんを扱ったら
傷つけてしまうんじゃないかって。



テオくんを守るため、



そう思っていたのもきっとただの言い訳で。



自分を守っていただけ。



そう考えると馬鹿馬鹿しくなった。



耳の奥で何かが切れたような
プツン、という音がこだました気がする。
テオくん
んっ、
床に座り込んでいたテオくんに
喰らいつくように唇を重ねた。



いつもはあまり感じないΩのフェロモンも
今日は俺の頭に侵入してきて溶かしていく。



テオくんはされるがまま。



ブカブカのパーカーの裾をめくると
触らなくても熱気が伝わってきた。
☆イニ☆
…本当に、いいの?
無意識に口をついて出た言葉。



どこまで臆病者なんだろう。
テオくん
ん、はや、くっ、
ゆっくり、なるべく優しく扱う。



俺が動く度に声を漏らすテオくん。
テオくん
…きす、してっ、
不安そうな顔でそう訴えてきた。



テオくんの震えている唇に自分のそれをつける。



やっぱり怖い。



いつだって怖い。



だってテオくんは
誰よりも繊細ですぐに壊れてしまいそうだから。



ノーセットで弱々しい髪の毛を撫でる。



____今日も、優しく。

プリ小説オーディオドラマ