《☆イニ☆side》
床に座り込んで
立っている俺の服を握りしめているテオくん。
そうやって今テオくんを苦しめているのは
" ヒート "
もちろんテオくんは俺の番だ。
でも何もしてやることができない。
そう言って眉毛を八の字にしてせがんでくる。
テオくんは俺のパーカーの胸元を両手で掴んで
顔を引き寄せてきて、強引に口付けをされた。
俺はもとからΩに惹き付けられにくいのか
あまりヒートに対して敏感に反応しない。
だけど今は、今だけは
身体の体温がどんどん上昇していくのがわかる。
慌ててテオくんを引き離した。
その時、テオくんの悲しそうな瞳が映る。
まるで、
" 怖いんでしょ? "
そう言われてるような。
確かに、言っちゃえばもちろん、
____怖い。
理性を捨てて本能のままにテオくんを扱ったら
傷つけてしまうんじゃないかって。
テオくんを守るため、
そう思っていたのもきっとただの言い訳で。
自分を守っていただけ。
そう考えると馬鹿馬鹿しくなった。
耳の奥で何かが切れたような
プツン、という音がこだました気がする。
床に座り込んでいたテオくんに
喰らいつくように唇を重ねた。
いつもはあまり感じないΩのフェロモンも
今日は俺の頭に侵入してきて溶かしていく。
テオくんはされるがまま。
ブカブカのパーカーの裾をめくると
触らなくても熱気が伝わってきた。
無意識に口をついて出た言葉。
どこまで臆病者なんだろう。
ゆっくり、なるべく優しく扱う。
俺が動く度に声を漏らすテオくん。
不安そうな顔でそう訴えてきた。
テオくんの震えている唇に自分のそれをつける。
やっぱり怖い。
いつだって怖い。
だってテオくんは
誰よりも繊細ですぐに壊れてしまいそうだから。
ノーセットで弱々しい髪の毛を撫でる。
____今日も、優しく。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。