第12話

必要2※Ω
2,562
2018/01/21 10:43
《テオくんside》



__ピロンッ、



友達と遊んでいて
ちょうど別れるというときにLINEの通知音。



テ「うん、じゃあなっ」



友達が歩き出したのを確認して
自分も歩き出す。



iPhoneを取り出してLINEを確かめる。



送信元はじんたんだった。



その内容は要件も書かず、ただ『ておくん』だけ。



こういうことは何回かあった。



返信もせず、さっきよりも速足で家に向かう。



__ガチャ、



家に入るとリビングにも
ほかの部屋にもいないじんたん。



俺の部屋を開けると
案の定そこのベッドでくるまっていた。



漂う甘い匂い。



これもじんたんからだ。



じんたんから漂う匂いは他のΩよりも強い。



テ「…じんたん、」



名前を呼びながら布団や衣服をめくる。



するとそこから覗いたのは
真っ赤になったじんたんの顔。



じ「…ぁ、テオくっ、」



目が合った瞬間じんたんは
ベッドから飛び出して俺にしがみつく。



甘い匂いに頭がやられそうになった。



もし理性が吹っ飛んでも
うなじを噛まないように、じんたんの首に
サリーのマフラーを巻く。



そして抱きしめ返した。



弱いながらも必死に力を出すじんたん。



息が苦しそうで、目から涙が零れている。



背中を優しく撫でてやると
次第にじんたんは落ち着いてくる。



じ「…ごめっ、いつもっ、」

テ「大丈夫、大丈夫、」



今度は薬飲み忘れないでよ、とじんたんに言う。



じ「もうちょっと、このまま…がいい、」

テ「ん、」



しばらくそのままにしていると
呼吸が落ち着いてきて、顔を見ると
目をつぶっていた。



寝ている。



こういう時、ふと思ってしまう。



じんたんが、俺の番だったらいいのに。



運命は、残酷だ。



今まではずっと



『じんたんには俺が必要』



だと思っていた。



いや、思い込んでいた。



だけど、じんたんを手放せなくなっていたのは
俺の方なのかもしれない。

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