第116話

モノクローム※Ω3.5
1,499
2018/09/29 10:33
《☆イニ☆side》







ただの客。







今までの人達と何ら変わらない。







なのにどうして、こんなにも切ないのだろうか。







…どうして、こんなにも心地良いのだろうか。







気を緩めれば勝手に涙が出てくるし、彼の顔を見ると余計泣きたくなる。







自分が小さく感じて、腹立たしくもなる。







久しぶりの優しさに触れて、全てを許したくなる。







コロコロと変わっていく、この忙しい感情。







何だろう、この感じ。







愛し、愛されたい。







封じ込めるように忘れていた、思い出してはいけない夢が蘇ってしまった気がした。







この際、誰でもいいのかもしれない。







此処を抜け出すことが出来るのなら、誰でも。







それがたまたま…テオくんだった、というだけで。







「…てっ、ぉく、っ…」







そう呼びながらテオくんの方を向くと、優しい目で此方を見つめていた。







途切れそうな呼吸の中、言いたいことが混乱してしまう。







俺が何も言わずに居ると、顔を首元に寄せて来た。







その舌が、鎖骨あたりの皮膚をちろ、と舐める。







少しだけ甘噛みされて、吸引される。







「ぅ…だ、めっ」







首あたりの接触は避ける。







これが店のルールだった。







だからもちろん所有印をつけることも許されない。







誤って番の契約を交わしてしまうかもしれないからだ。







なのに、



…なのに、







俺の身体は拒むばかりか、悦んでさえいる。







あんなに首筋を攻められることを嫌っていたのに。







殴られてでも、そこだけは守ってきたのに。







この店に捨てられてから、初めて。







首筋に、赤い花を咲かせてしまった。







もう、いっそそのまま、買ってくれればいいのに。







苦しい。







もうそれ以外望まないから。







悪いことは、しないから。







…もう、捨てられたく、ないよ。







どうか……、








俺を、買ってはくれないだろうか。

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