《みやかわくんside》
じんたんの、
____多分、じんたんだろう、
苦しそうな声で目が覚める。
まだ意識が微睡んでいる中耳を立てると
テオくんを呼んでいるようだった。
…ヒートか。
甘い匂いが漂っている。
なんだ、まだテオくんの番じゃなかったんだ。
寝ぼけている頭で理解した。
早くテオくん起きてあげればいいのに、
何してんだよ、
そんなんだったら、
俺がじんたん奪うよ?
これは夢なのだろうか、
ありえない思考へ自分が傾いていく。
いや、夢なんかじゃない。
抑えていたんだよ、この感情を。
じんたんの呼吸が荒くなっていくのに比例して
俺の封じていた感情も加速していく。
寝転んだまま呼んだ。
俺が起きていることに気づいていなかったのか
身体を大きく揺らしてこちらを向くじんたん。
分かってはいるが聞く。
じんたんは本能で
テオくんとは違う " α " を避けているのか
なかなか状況を教えようとしてくれない。
ただ涙目になりながらあたふたしている。
αの弱点を知っていてやっているのだろうか?
そんな姿見せられちゃったらさ
俺、歯止め聞かなくなっちゃうよ?
ヒートで
じんたんの身体が疎くなっているのをいいことに
手を引っ張って俺に覆いかぶさるような体勢にする。
今すぐにでも
" テオくん " と叫びそうなじんたんの口を塞いだ。
自分の唇で。
そのままじんたんを回転させて
さっきとは逆、俺が覆いかぶさるようにする。
そう言ってじんたんの首筋に顔を寄せた。
いい匂い。
美味しい匂い。
その首筋に歯を立てて、そのまま力を入れる。
傷口から流れてくる血に淡さはなく
鮮やかで、艶やかだった。
今の自分がおかしいことは分かっている。
きっと明日の朝になれば後悔だってする。
なんでじんたんを傷つけたんだろう、って。
でもそう後悔するのは、俺の " 理性 " であって。
本当の " 俺 " は、
俺の " 本能 " の中にあるから。
だからこれでいい。
そう、愚かな考えをしてしまう程に
じんたんは俺にとって最大の
____堕とし穴、
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。