《☆イニ☆side》
俺はパソコンに向かっているテオくんを睨む。
両耳にイヤフォンをしていて聞こえないのか
ずっと無言のままだ。
片方のイヤフォンをぽろっと外した。
やっとこっちを向いたテオくん。
真剣に言ったのに、テオくんは盛大に吹き出した。
ぼそっと言う。
笑うテオくん。
これでも結構怒ってるのに。
笑い終わるとまたイヤフォンをして
パソコンをいじり始めた。
ついにいじけた俺は、ソファで横になる。
本当は全然眠くなくて
しばらく経っても逆に目が冴え冴えしている。
テオくんの声が後ろからして、思わず肩が跳ねる。
必死に返す。
意味のわからないことを言い出した。
不意にテオくんの声が近くなって
耳元を触られた。
くるっと振り向いて、またテオくんを睨みつけた。
遅いよ、と言ってテオくんに抱きつく。
そう言ってテオくんも
俺の背中に手を回してくれた。
俺たちの仲直りはいつもこう。
はいはい、と苦笑いのテオくん。
そんなくだらない日々が、とてつもなく、幸せで。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!