第32話

強く※Ω
2,275
2018/01/25 12:26
《☆イニ☆side》



__ピコンッ



着信音と同時にiPhoneの画面に表示されるのは
テオくんからのLINE。



今は撮影でスカイハウスに向かうために
家から出る寸前だ。



_「風邪ひいちゃった」



テオくんがよく使う
可愛い絵文字とともに送られてきたのは
風邪ひいたから撮影に行けない
というものだった。



不自然だ。



テオくんが風邪を引いて
撮影に来なかったことは1回もない。



しかも今日は割と大事な撮影だから
テオくんがドタキャンするはずないのだ。



そしてあることを思い出す。



じ「…馬鹿だ、」



急いで靴を履き、外に出る。



俺が向かったのはスカイハウスではなく
テオくんの家。



キーケースから
渡されていたテオくんの家の合鍵を出した。



家に飛び込むなりテオくんの姿を探す。



寝室に入ると
案の定ベッドでくるまっているテオくん。



じ「…テオくん?」



名前を呼びながら揺すると
びっくりしたように顔を出した。



テ「…なん、で」



涙目になりながら息を荒くしている。



テオくんの手には
前に俺が貸した服が握られていた。



3ヶ月ぶりの発 情期。



じ「…また迷惑かけるからって我慢してたの?」



バレたか、というように俯くテオくん。



すると笑顔で顔を上げて



テ「…大丈夫だよ」



そう言った。



この前テオくんが言っていたことを思い出す。



_俺より弱い奴が俺のこと守れるわけないやん



俺はきっと、頼りない。



だからテオくんも俺を頼りきれない。



じ「…もし俺が強かったら、」



俺の番になってくれてた?



聞きたくてもずっと聞けないこと。



その先は言えなかった。



テ「…もう帰りなよ」



優しい笑顔で息を荒くしたまま言う。



辛いはずなのに
何でいつも俺ばかり守られてるんだろう。



Ωに守られるαなんて情けなさすぎる。



俯くと、テオくんの指先は震えているのが見えた。



もっと強く、ならなきゃ。



そう思った。



テオくんが安心できるように。



テオくんよりもっともっと、



__強く。

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