《☆イニ☆side》
テ「いってきます」
じ「いってらっしゃい、」
__ガチャ、
ドアが閉まる音がした瞬間
自分の頭と腰あたりに違和感を感じる。
触ってみると
じ「…また、」
鏡の前に立つと見えるのは
自分の頭から生えている犬耳。
そして後ろを見ると尻尾まであった。
この世界の人類には、" 人間 "と" 半獣人 "の
二種類があった。
もちろん人間がその人類を9割は占めている。
その中の1割。
それが俺。
半獣人が生まれるのは遺伝じゃなくて
確率らしい。
もちろんこのことはテオくんに話していない。
テオくんは普通の人間だからだ。
最近、犬耳を上手くコントロール出来ない。
前までは何もしなくても出てこなかったのに
最近は気を抜いた時に、ピョコっと現れてくる。
今までどうやってしまっていたかも
どうやって出していたかも忘れてしまった。
じ「…とりあえずテオくんの前では出さないようにしないと。」
自分にそう言い聞かせた。
テ「ただいま~」
数時間後、帰ってくるテオくん。
その頃にはもう犬耳も消えていた。
そして何気なく撮影をして
編集をして、いつものように帰ろうとする。
テ「え、じんたんもう帰るの?」
じ「うん、今日おかん来るし。」
え~やだ~と駄々をこねるテオくん。
いつもはかっこいいけど
こういう風に寂しがり屋なのはかなりのギャップ。
可愛い。
本当は一緒にいてあげたいけど
流石にお母さんの約束をほったらかすと
後々怖いことになる。
じ「明日また会えるから、ね?」
テオくんをなんとか説得して家に帰った。
そして、数時間後。
結局、今俺が立っているのは
スカイハウスの前。
テ『パソコン忘れてるよ』
とLINEで言われたのだ。
流石に夜1日編集できないのは痛いので
お母さんと別れ、スカイハウスに行くことにした。
じ「ただいま~」
スカイハウスに住んでるわけじゃないのに
癖でただいま、と言ってしまう。
じ「うあっ、」
玄関に入るなりびっくりするほどのスピードで
俺に抱きついてくるテオくん。
じ「テオくん動けない」
テオくんがどくのを待つが全く動く気配がない。
テ「…じんたん頭、」
キョトン、とした様子で俺の頭を見ながら呟いた。
恐る恐る頭に手をやる。
ふわ、とした感触。
テ「犬耳、」
必死にテオくんから離れる。
じ「や、これは、違くてっ、」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。