第87話

真 王様ゲーム
1,921
2018/04/14 16:58
《テオくんside》





この世界、





いや、この人種は不公平だ。





" 王様ゲーム " のウイルスに犯され

強制的に命に関わるゲームに参加させられる。





そんな人種の人間は

少ないわけではなかった。





もちろん俺の友達にだって

大切な動画仲間にだってその人種の人間がいる。





なんでこんなに苦しい思いをしなきゃいけないのか

考えれば考えるほど馬鹿馬鹿しくなって。





何回もこのゲームを辞めようとした。





でもそれは許されない。





必ず、辞めようとする人間には罰が与えられるのだ。





軽いものから重いものまで。





そんなの嘘でしょって思うかもしれないし、

正直俺も嘘だと思って命令に従わなかった。




☆イニ☆
…テオくん?撮ろ?





考え事をするとフリーズしてしまう癖。





そろそろ直したいところだ。





今日もふたりで挨拶をする。





同じ目標に向かって。





だけど俺は違うことを願う。





今日も命令は来ませんように、と。





じんたんはウイルスに犯されていない。





なるべく巻き込みたくないのだ、大切な人を。





だけどそんな期待を鮮やかに裏切るのが

正体不明の " 王様 " だった。





揺れながら音を鳴らすiPhone。





時計を見ると12時ちょうどだった。




テオくん
ごめん、ちょっと





素早く中身を確認する。




☆イニ☆
今どきメール?珍しいね





『このゲームはウイルスに犯された人間全員で行うゲームです。動画クリエイター テオくん は 動画クリエイター ☆イニ☆ と性行為をする。王様の命令は絶対です。途中棄権は認められません。なお、テオくん は ☆イニ☆ にゲームに参加していることを言及してはいけない。ルールに逆らった者には罰を与える。今回の罰 : ☆イニ☆が心臓麻痺で死亡。END』





メールの内容を見て愕然とする。





この王様ゲームは

" 人間関係を破壊するゲーム " と呼ばれていた。





確かにそうなのかもしれない。





王様はどこまで知っている?





俺の想いや気持ちまでも

全部理解して出した命令なのだろうか。





簡単に言ってしまえば俺は、





____じんたんが好きだ。





でもそれを言わないのは

今の関係を崩したくなかったから。





だから今回のメールは

好都合のようで、とても不都合なのだ。





完全に王様は

俺らの関係をぶち壊しに来ている。





せっかく、





俺がこの気持ちを抑えてまで築いてきた関係なのに。





でもやらざるを得ないんだ。





俺自身に罰が与えられるならまだいい。





今回の罰は

じんたんの命に関わるから。





王様は残酷すぎる。





俺にとってじんたんが死ぬことは

自分の " 死 " 以上に辛いということを

王様は知っているのだ。




☆イニ☆
テオくん具合悪いの?休む?





純粋なじんたん。





俺はそんなに酷い顔をしているのだろうか。




テオくん
…や、大丈夫、撮ろっか





ん、と首をかしげているが

そんなことは気にしていられなかった。





今日の24時までに遂行しなくてはいけない。





当たり前だが

その日の撮影が上手くいくことは無かった。




☆イニ☆
テオくん本当に大丈夫なの?今日はここでゆっくりする?





" ここ " はスカイハウスのことだろう。





時計を見ると短い針は16時をさしている。





あと8時間。





心臓が激しく鳴り止まないが

もう決意はしている。





じんたんを守ることに恥などないから。





だからごめんじんたん、

その言葉に甘えちゃうね。




テオくん
…じんたんも一緒にいて?





一瞬困ったような顔をするが

すぐ優しい笑顔になって

分かったよ、と言ってくれた。





この時点で8時間後のことはもう目に見えている。





少しでもじんたんと一緒にいたいから。





命令を遂行するのは、まだ先でいいだろう。

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