第97話

思い出2
1,244
2018/05/04 01:31
《テオくんside》






☆イニ☆
俺、今でも復活動画みたりするんだよね







脳の中を掛け巡らせる。







駄目だ、これも覚えてない。







..なんだっけ、復活動画って。







持っていたiPhoneでYouTubeを開いて

自分たちの動画を遡る。







" スカイピース完全復活 "

というタイトルの動画を発見した。







サムネをみて、少しずつ思い出す。






テオくん
あぁ、あれね、俺もたまに見るよ







俺は最近

いや、もしかしたら最近じゃないのかもしれない。







" 若年性アルツハイマー病 "

と診断されてしまった。







簡単に言って、若い人が患ってしまう認知症。







でもコイツはタチが悪い。







新しい記憶からどんどん奪っていく。







できるだけ、じんたんには気づかれたくなかった。







治る病気なんかじゃないのに。







だから最近、ずっとiPhoneのメモ帳を使っている。







じんたんのおかげで思い出せたことも

すぐにメモする。







そうじゃなきゃ忘れてしまうから。







もちろん自分の家と

スカイハウス周辺の地図だって保存してある。







いつバレるか分からない。







もしかしたら不信感を抱かせてるかもしれない。







でも言えなかった。






☆イニ☆
..ちょっとお腹痛くなってきたからお薬買いに行ってもらっていい?







だからせめて

やってあげられることは全部しようと思った。






テオくん
え、大丈夫?行ってくるね、







また忘れないように

メモ帳に " 腹痛の薬 " と記す。







お店に向かっているあいだも

家に帰ろうとしているあいだも

油断してしまっては道を忘れてしまう。







..でも、

と、また俺は余計なことを考えるのだ。







道を忘れたりしてしまっても

じんたんのことだけは、覚えていたい。







じんたんとの思い出は

着々と消えていってしまっているけど。







ずっとじんたんの存在を頭に残していたい。







そしてずっと、そばにいたい。







それだけ叶えば、もういいと思った。







やべ、と思いiPhoneを見る。







よかった、道、間違えてない。







ようやく着いた家。







鍵を差し込んで捻るが

どうやら開けっ放しだったらしく

1度閉めてしまうような形になってしまった。







もう1度鍵を開ける。






テオくん
..臭、







鉄の匂いが鼻をつく。







俺魚なんてさばいた記憶ないけど。






テオくん
うわあっっ、!







人が倒れている。







床には血が溜まっていて。







死んでいるかはまだわからないけど

とりあえず救急車を呼ばなくてはいけない。







ところで、






テオくん
..誰だろう、この人





















____お互いの願いが、叶うことは無かった。

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