《テオくんside》
横からその声と共に視線を感じるが
いつものようにカラ返事をしてiPhoneに集中する。
ここもいつもと同じ。
そう言ってただじんたんがいじける。
しまった。
今俺らがいるのはじんたんの実家。
ということはじんたんが大好きな猫がいるわけで。
じんたんが部屋のドアを開けると
既に待っていたかのように入ってくるくーちゃん。
じんたんがくーちゃんを呼ぶと
俺なんていないかのようにじんたんに駆け寄る。
くーちゃんをひょいと抱き寄せて
俺の横に座ってきた。
どれだけ喧嘩してもそれだけは変わらない。
ずっと俺の横にはじんたんがいる。
餌になるようなものを持ってきたのか
俺の膝やら肩やらにくーちゃんを寄せ付ける。
餌を求めるくーちゃんは
俺の足の上に飛び乗ってきて肩に顔を近づけた。
思わず及び腰な声が出る。
俺からくーちゃんを離しながら言った。
ふーん、と自分から聞いたことに
もう興味をなくしてくーちゃんと遊んでいる。
独特なくしゃみ。
じんたんも猫アレルギーだ。
そんな辛いなら離れればいいのに、と思う。
んー、と曖昧な返事で
相変わらずくーちゃんに顔を埋めていた。
ふと何かを思い出したように起き上がり
くーちゃんは少し開いていたドアから出ていく。
名残惜しそうに見つめるじんたん。
返ってきたのは意外な返事だった。
ニヤニヤしながらそんなことを言ってくる。
なんかちょっと気に入らない。
じゃあかまってって言えばいいじゃん、と
人差し指でツンツンツンツンしてきた。
へえ、いい度胸してんな、
肩を押すと簡単に倒れるじんたん。
そんなすぐに押し倒されるようじゃ駄目だよ、
ま、強くなってもらっても困るんだけど。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。