《テオくんside》
じ「テオくん、」
ほんのり色づいた顔で俺の名前を呼ぶじんたん。
テ「じんたんもう酔ったの?」
えへへ、と笑いながら
問いには答えず手を握ってくる。
おもちゃで遊んでいるみたいに
楽しそうに手をいじるじんたんは相当可愛くて。
テ「もうじんたん食べちゃいたい」
ふざけた口調で言った。
じ「食べてよ、」
相変わらずの掠れた声でそんなことを言う。
じんたんがこんなに余裕なのはなんかむかつく。
いつもみたいに
仄めかすだけで顔を真っ赤にして
余裕のない声で鳴いているじんたんでいてよ。
その時ふと、ある物の存在を思い出した。
それは鞄に1,2ヶ月ほど入れっぱなしだった媚 薬。
たしか誰かにもらったまま放置してある。
本当に効くのかは分からないけど
使うなら今だな、と。
台所に行ってコップに水をためて
その中に例のものを入れる。
テ「じんたん酔いすぎ、水飲んで」
そう言って渡した水溶液。
もちろんじんたんは
なんの疑いもなく、はぁい、と飲み始めた。
それから数分経っても
じんたんには何の変化もない。
なんだ、やっぱりただのネタ薬か、と
ちょっとガッカリする。
と、じんたんはアウターを脱いだ。
そんなに部屋暑いかな、と思う。
むしろ寒いぐらいだ。
まさか、と思ってじんたんを見ていると
小刻みに震え出して、息も荒くなってきていた。
じ「…テオくっ、なんか、おかしっ、」
泣きそうな顔で訴えてくるじんたん。
じんたんの首元に手を回すと
高すぎる体温がそのまま伝わってくる。
…やばい、多分、止まらない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!