第64話

手遅れ
1,552
2018/02/16 09:22
《テオくんside》



☆イニ☆
わ、やば…
パソコンの液晶を見つめて小さく呟くじんたん。



さっき撮った動画。



" 少しでも空に近づく "



というじんたんが持ってきた謎の企画だ。



改めて動画を見ると
割と痛々しい落ち方をしている。



落ちた後のじんたんは、執拗に肘をさすっていた。



止めればよかったかな、と少しだけ後悔。
テオくん
怖かった?
企画持ってきたの俺だからな~、と
ケラケラ笑いながら言うじんたん。
☆イニ☆
…でもまあ、ちょっと、
最近のじんたんは素直だ。



恥ずかしそうに答えるじんたんが可愛くて
思わず抱きしめてしまう。
テオくん
もう大丈夫だからな〜、
☆イニ☆
ねえ泣いてないよっ、
照れ隠しなのか何なのか
そういうところ" だけ "は素直じゃない。



気づけば無意識に
俺の顔はじんたんの顔に近づいていて。
☆イニ☆
駄目、
そう言って肩を抑えて拒まれる。



それが気に入らなくて
じんたんが被っているニット帽を取った。
☆イニ☆
わあっ、
ふわっとノーセットの髪の毛が出てくる。



セットしてる髪の毛よりも
俺はこっちの方が好きなんだけどな。
☆イニ☆
もうやめてよ、
じんたんが髪の毛に気を取られているうちに
柔らかそうな唇に自分のそれを重ねた。
☆イニ☆
ん、
咄嗟に左手を後ろにつくじんたん。



すると痛めていた肘がカクッと曲がって
こてん、と背中から後ろに倒れてしまった。
テオくん
自分から寝そべってくれるんだ、
最近の俺はおかしい。



自分でも思う。



離れて暮らすようになってからだ。



俺の哀感心は相当強いらしい。
テオくん
押し倒す手間なくなったね?
ちょっと待ってよ、と言葉で抵抗してくる。



少し薄めた目をしながら。
テオくん
そんな顔するからだよ、
じんたんの固く閉ざされた唇が
微かに動いて数mmだけ開く。



やっべえ、もう無理だ。



ごめんじんたん。



そのアザで染まった肘なら
俺のことを拒みきれないから好都合だ、



そう少しでも思ってしまった俺は、
じんたんの沼にはまっていて



もう、抜け出すには



____手遅れだ。

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