第82話

欲しすぎて
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2018/04/01 11:12
《☆イニ☆side》




☆イニ☆
ね、テオくん





のんびりテレビを見ているテオくんを呼ぶ。





ん〜、といつもと変わらない愛しい返事。




☆イニ☆
手、貸して?





俺がそう言うと

無言でスラッとした長い腕を差し出した。





長い指に俺の指を絡める。





このテオくんの腕に包まれると

すごく、すごく安心する。





暖かくて、力強くて、優しい。





だからたまに思うんだ。





テオくんの両腕を切り落として

ずっと俺の腰に巻いておけば

テオくんのこの愛しすぎる両腕が

二度と他の人を抱くことはないんだよな、って。





そうすれば、テオくんを独り占めできるし。




☆イニ☆
ね、テオくん





2回目だからか

ん?とこっちを向いてくれたテオくん。





愛しい。





その瞳は澄んでいて、美しかった。





ねえ、もしさ、

テオくんの両目をくり抜いて

俺のポケットに入れておいたら

テオくんの最後の記憶は、俺になるはずだよね?




☆イニ☆
ぎゅってして?





自分でも分かるほど

甘ったるい声でテオくんに要求する。





そしたらテオくんは

どうした、って優しい声で言って

俺を抱きしめてくれるんだ。





その幸せに浸りながら耳を澄ますと

テオくんの心臓の音が聞こえてきた。





一定のリズム。





あれ、おかしいな、





最初はハグをしただけで

おかしくなっちゃうくらい、鼓動が速かったのに

もう俺じゃ、満足出来ないの?テオくん、





この心臓をえぐりとって

俺の付けているネックレスと交換したら

別々の家で寝てる時も、テオくんを感じられるかな?





不安で仕方ない夜も。





テオくんが欲しい。





欲しくてたまらない。





心臓が疼いてどうしようもないんだ。





テオくんから離れて部屋へ入る。





ドアは開けっ放し。





ソファに座って

おいでって、誘うみたいに呼ぶ。





ねえ、なんで?





来てよ、呼んでるんだからさ、





俺が離れてから、すぐiPhoneを触ったよね、





誰と連絡とってるの?





ねえ、テオくん、





はやく部屋に置いでよ、





逃がさないよ?





…離さないよ?





俺なら、絶対に。





テオくんは誰にもあげたくない。





触れさせたくもない。





テオくんがもし

他の女の子と手を繋いでるのを見たら

その綺麗な指、喰いちぎってあげるね。





そのスラッとした長い脚も

いっそのこと引き裂いて、歩かせなくしよう。





そうだ、ついでに唇を縫って

俺だけのキスを味わえるようにしてあげなきゃ。





ねえ、俺っておかしいのかな?





この愛、重すぎるのかな?





欲しすぎるんだよ、テオくんが。





そろそろこっち向いてよ、テオくん。





それでも振り向かないテオくんが悪いんだよ?





もう何言っても聞かないよ、





台所にある、切れ味の悪い包丁を手に取る。




☆イニ☆
…死ね、





.





.





____俺のこと好きじゃないんだったら。





.





貴方解剖純愛歌 ~ 死ね ~ / あいみょん

◎ Arrange by ぴぃち .

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