《☆イニ☆side》
お酒の缶を持ったテオくんの腕を掴んでそう言う。
今日のテオくんは
いつもより呑んでいて少し心配になってしまった。
テオくんにこう言われると
俺は高確率で断ることが出来ない。
テオくんよりお酒に弱くて
すぐ酔い回るけど頑張っちゃったり。
____プシュ、
そんな音とともに
今日もテオくんに釣られお酒を口にする。
テオくんにそう言っている俺だが
俺も俺で瞼がすごく重いし頭と呂律が回らない。
まだ辛うじて働いている頭に命令して
テーブルに散らかっている物を台所へ持っていく。
まるでテオくんを幼稚園児のように扱う俺。
俺それないと寝れないもん、とテオくんは
シラフの時には絶対に言わない台詞を吐いた。
それで寝てくれるなら、と
自分が早く寝たい一心で顔を近づける。
テオくんの肩に手を置いて、唇を重ねる直前、
テオくんに手首を掴まれた。
そしてそのまま押し倒される。
そう言って俺の首筋をカリッと噛み
弱めの力でゆっくりと吸うテオくん。
テオくんの癖だ。
必ず最初にこの行為をする。
俺にする気がなくてもこれを1回でもされてしまえば
その気になってテオくんに従ってしまうのだ。
だからいつでも俺の首筋には
テオくんがつけた所有印があることになる。
今日のテオくんはいつもより舌遣いが上手くて
危うくそれだけで果ててしまいそうになって。
数分前までは思ってもいなかったことを
つるっと口にしてしまうぐらいには
テオくんという沼にハマってしまっている。
.
曖昧に聞こえる声に目を覚ます。
その急ぎ気味の声に
寝坊でもしたのかと思って飛び起きた。
それと同時に痛む腰。
これは確実に昨日の後遺症だ。
…やはり呑みすぎると忘れてしまうらしい。
でもきっと微睡んだ意識の中でも
行為の後に俺に服を着せてくれるくらいには
優しいんだろう、テオくんも。
ただし、
テオくんの大量飲酒は本当に、
____危険だ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!