※このお話はオメガーバースになっています。
※非現実的なお話です。
※実際の彼らとは設定が大きく異なります。
※中編(??)
※吉原ラメントという曲を脚色したようなお話です。
以上が地雷になっている方、リアリティを求める方はブラウザバックをオススメします。
《☆イニ☆side》
もう何年、此処に居るのだろうか。
捨てられてから、何年経ったのだろうか。
分からない。
分かりたく、ない。
別に不自由はない。
出される飯は並より高級な物だし、今日だって真新しい布に腕を通している。
まぁそれはどうせ、良い家畜を育てる為の餌、でしかないのだが。
強いて不自由を挙げるなら、暴力や乱暴、と言ったところだろうか。
俺だって人間だし、腐り切った奴とは違って痛みや苦しみを感じない程器用ではない。
良い事も、悪い事も。
それもこれも全部、性別の所為だ。
好きでこの性別に、
…Ωに、生まれた訳じゃ、ないのに。
雨だから、だろうか。
普段は考えない事を考えてしまう。
そんな無駄な思考にエネルギーを使っていては今日も体力が持つか分からない。
消し去ろうと首を振ると、来客を知らせる音が鳴る。
多分世話役だろう。
「お食事をお持ち致しました。」
感情の込もっていない、退屈そうな声。
返事をせずに居ても扉が開くのはいつもの事だ。
「此方お食事と今月分の明細です。」
言われて気づく。
もう、月末なのか。
世話役が退出し、一人残った部屋で明細に目を通す。
使い道のない俺の口座に振り込まれた額は、今月も相当の量だった。
何の為に金を貯めているんだろう。
別に、もう…
まただ、と明細をグシャグシャにして捨てる。
朝から立派な飯だ。
こんなに食べ切れる訳ないだろうが。
と、心の中で愚痴を零しつつ、味だけは確かなものに手をつける。
その横には2粒の錠剤。
やはり食べ切れなかった朝食を避け、それを手に取った。
これは避妊薬だ。
こんな仕事をしていればいつか孕むことは明確だが、それでは営業に支障が出るのだろう。
毎朝飲まされるそれを口に含んだ。
勿論、抑制剤は用意されない。
そんなもの飲んだら稼ぎが無くなるからだ。
「…っ、」
突然、ズクンと頭が痛む。
…そろそろ来てしまうようだ。
Ω特有の、発情期が。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。