第46話

守る※Ω
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2018/01/29 09:59
《☆イニ☆side》



じ「…テオくん、ちょっと薬もらってくる」



そう言って俺は立ち上がる。



その貰いに行く"薬"は、Ω用の抑制剤。



さっきから少し身体が温かくなってきて
薬を飲んでおこうと思ったけど
ちょうど切れてしまっていた。



テ「え、大丈夫なの?着いてこうか?」

じ「うん、まだ大丈夫でしょ」



本当に大丈夫?なんかあったらどうするの?
と、必要以上に心配される。



じ「大丈夫、編集続けてて」



なんとか説得して外に出た。



じ「おわ、」



思ったより風が強い。



そして季節は冬。



寒いはずなのに身体の芯は温かい。



というより熱い。



やばいな、と思い早歩きで病院に向かった。



そしていつもの薬を処方され
それだけで安心しきってしまって
その後は何も考えずに家に帰ろうとする。



この時に薬を飲んでおくべきだったのだろうが。



さっきまで熱かった身体も
今では冬の寒さを感じれるようになっていたから
完全に油断していた。



前からくる男の人を避けようと大きく右にずれる。



絶対ぶつからないだろうと思っていたのに
軽く肩がとん、と当たってしまった。



じ「わ、ごめんなさい」



すれ違いざまにそう呟くために振り返ると
その男の人からきついお酒の香りを感じた。



お酒が苦手な俺は、う、と竦む。



足早に立ち去ろうとしたのに
もうその時には遅くて
左手首をがっちりと掴まれていた。



_「いい匂いする、」



手首を引っ張られて顔を首筋に近づけられる。



_「お兄さんΩでしょ」



俺αなんだよね、と言った男の人は、さっきとは違う
獲物を見つけたかのような顔をしていた。



じ「あの、急いでるんで」



握られていた手首から熱が伝わり
気づけば全身が熱くなっていて。



じ「もう時間ないんで離してもらえますか」



αに耐性がないのに加えてコミュ障も発揮される。



早口で言ったその言葉は
自分でもわかるぐらい震えていた。



_「こんなか弱そうなΩちゃん放っておけるわけないじゃん」



その言葉に俺の本能が逃げろ、と叫ぶ。



でもどれだけ念じても足は動かない。



それなのに俺の息は荒くなる一方で。



ついに足から崩れてしまった。



地面に座り込む。



_「さ、行こうか」

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