第106話

心の声
1,335
2018/07/19 10:34
《☆イニ☆side》







眩しい。







夏が近づいた、

暖かい、というより、少々暑いぐらいのこの季節。







まだ春、と言っても通用しそうだ。







眩しさはだんだん増していって

微かに見えるシルエットは逆光の中で、目がくすむ。






☆イニ☆
行かないで







声に出した感覚はない。







なんならぼんやりとそれを眺めているだけだ。







身体はやけに落ち着いていて

一方頭の方は微睡んでいる。







気づけば遠くなっていて。







" あの日 " の色が、俺の脳内を侵食した。







.






テオくん
もうすぐ夏だね〜、







暑いしもう夏か、と呟くテオくん。






☆イニ☆
ここ?







小さなアパートの前で足を止める。







歩く時はこれ、というお決まりの歌と一緒に。







所沢、久米。







ちょうど5月あたりだろうか。







" これからの道 " を聞かれた。







いつも俺の " 前 " を行くテオくんに。







不安なんかないよ、そう言うから。






テオくん
さ、入ろ







2人で歩き出した。







俺らの笑顔は絶えない。






テオくん
じゃあな!







いい慣れているような声で

そして、耳障りのいい声で言われる。







もう葉っぱだらけになってしまった桜の木。







その下には花びらが散りばめられている。







まだ咲いてたいよ、

なんて言いそうな花びらを見つめて

少し微笑んでしまう、これからの日々に。






☆イニ☆
…永遠に続きますように







____俺らの時間が。







テオくんも同じように思ってくれてるといいな、

ってちょっと過剰な願いを抱えてみるけど

きっとテオくんのそれと俺のそれは違う意味で。







俺はテオくんしか見えてないし

多分今までも

…これからも、テオくんしかいないんだと思う。







2人で過ごして

少しずつ、少しずつ、成長していく。







それでも俺は子供のままで。







少し曲がった感情なんて知らなくて。







" 優しさ " が時に " 残酷 " になることなんて

当然、知っているわけがなかった。






テオくん
…じんたんごめん、







留守電にそう入れられていたのは

クリスマスあたり、だったかな。







乾いた空。







俺の左手には冷えたプレゼントが握られていた。







眩しい色とりどりのネオンが

賑わう街をさらに活気づけている日。







聞き慣れているはずなのに

いつもとは違うような声で。







そのまま立ち尽くして

自然と胸がじわっと熱くなった。







まるで火傷をしたような。







テオくんは俺に、

なんであんな嘘をついたんだろう。







優しい笑顔のテオくんなんて好きじゃないのに。







いつもみたいに

無邪気に笑うテオくんじゃなきゃ好きじゃないのに。







そんな取ってつけるような感情が溢れる。






☆イニ☆
…好き、なのに







唇の隙間から漏れ出た言葉は

やっぱり1番正直な気持ちだった。






☆イニ☆
…離れないでよ、







目の前で目を薄く開けるテオくん。







口と鼻は

無機質な管で繋がれたマスクで覆われていた。






☆イニ☆
…ずっとそばにいるって約束したじゃん








相変わらず綺麗な手。







それでさえ触ってしまったら壊れそうで

なかなか思うように手が動かない。







誰でもない。







テオくん以外じゃありえないのに。






テオくん
…へへ、大丈夫だよ







なんで、







なんで苦しいのに、







最後の最後まで優しく笑うの?







俺が落ち着いちゃうような声で、







大丈夫、なんて言うの?






☆イニ☆
行かないでよっ、







やっと掴めたのに。







やっとその手に温もりを与えようとしたのに。







間に合わなかった。






☆イニ☆
…俺が守ってやるよってかっこつけてたじゃん、







なんでテオくんはもうここにいないの?







本当にテオくんは、







…ここにいないの?







ガラクタになった体は冷えきっていて。







…どうしようか、







独りぼっちじゃ、







寂しいや。






☆イニ☆
…テオくん、?







泣かないで、







俺がいなくても大丈夫だから。







まるでそう言ってるかのように、







テオくんは涙を流した。







拭おうとも思わないぐらい、綺麗な涙を。






☆イニ☆
…じゃあテオくんも泣かないでよ、







小さく、そう呟く。







分かってるんだよ、俺だって。







これで最後だから、







もう一回言わせてよ、






☆イニ☆
…もっと一緒にいたかった、







大事なものは失ってから気づく。







そんな在り来りな言葉さえも、俺にのしかかる。







俺の心の声は、テオくんに聞こえるのかな。







聞こえてたらいいな、






☆イニ☆
大好きだよ







心配になるぐらい優しい人。







それがテオくんだった。







手を離して、俺はまた歩き出す。







テオくんが教えてくれた道を。







心の声は君にしか聞こえないんだよ
/ スカイピース

◎ Arrange by ぴぃち .







.







重い重い重い暗い暗い!!!

ヤダヤダヤダ文才なさすぎてヤダ!!!!

本当にこの曲好きすぎて

手を出してしまう始末( ; ; )

なんか普段のスカイピースとは少し違うような

そんな感じをこの曲から感じて。

こういう類の曲はあんま聞かないんですけど

なぜかグサッときましたねあだだます。

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