第34話

特別※Ω
2,126
2018/01/27 02:56
《☆イニ☆side》



じ「…テオくん大丈夫?」



俯いて息を荒くしながら目を閉じているテオくん。



テオくんが発 情期に入っても
俺はαなのに何もすることが出来ない。



テ「ふふ、大丈夫、」



自嘲のような笑みを浮かべて
テオくんはそう答えた。



情けねぇよな、と呟く。



テ「なんで今日薬効かないんだろ、」

じ「…なんか冷たいものでも買ってこようか?」



そういってこの場を離れようとする俺は
どうしようもなく、弱い。



テオくんは好き嫌いが多いから
食べれそうなものを選ぶ。



さっきは避けるように外に出てきたけど
結局テオくんが心配になって
気づけば早めに買い物を終わらせていた。



じ「ただいまぁ、」



いつでもどんな時でも
おかえりっ、と飛んでくるテオくんも
今日ばかりは来なかった。



さっきまでテオくんがいたリビングも
今では誰もいない。



寝たのかな、
とテオくんの部屋をノックして覗く。



じ「あれ、」



テオくんの部屋にも姿はなく
横の俺の部屋を見に行く。



引越し寸前でまとめていた俺の服を出して
巣を作っていた。



Ω特有の行動。



じ「テオくん、」



俺の声に振り返ったテオくんは
眉毛を八の字にして泣きそうになっていた。



テ「じんたっ、」



よける間もなくテオくんが抱きついてくる。



甘い匂いが俺を襲って
一瞬にして何も考えられなくなる。



理性が飛んでいく前に
必死にテオくんを引き離す。



普段は俺より力が強いテオくんも
さすがに今は弱くなっていた。



テ「お願いじんたっ、」



座り込んだテオくんに握られた手。



そこからはテオくんの震えが
手に取るように伝わってくる。



テ「早く噛んでっ、」

じ「…俺じゃ駄目だよ、」



自分にも言い聞かせた。



こんな弱い俺を頼って欲しくないから。



下から潤んだ目で見つめてくるテオくん。



テ「…じんたんがいいっ、」



駄々をこねる子供のような口調。



その言葉に俺の中の何かがプツンと切れて。



こんなに頭では駄目だと思っているのに
身体は迷うことなくテオくんの首筋に向かう。



それはきっと
俺自身テオくんに依存しているからだ。



それほどに溺れている。



テ「…んっ、」



自分の唇についたテオくんの血を拭った。



テオくんが俺の服を握って顔を近づける。



じ「…もう止められないから、」



そう言った俺に、もう理性はなかった。

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