《じんたんside》
じ「…っ、はぁっ、」
3ヶ月に1回、" 発 情期 "が来る俺。
正真正銘のΩ。
そう、ここは
__オメガバースが存在する世界。
じ「っ、ふ、ぅっ、」
無駄だとわかっていながら
必死に落ち着こうと深呼吸をした。
全身の血管が熱く、脈打つのがわかる。
運命の番じゃないはずなのに
真っ先に頭に浮かぶのは、テオくん。
我慢しろ、と自分に念じる。
発 情抑制剤を飲むが効果は見られない。
いつもそうだ。
少しでも遅いと全然効かない。
静かになってくれない鼓動。
散らばる薬のゴミ。
薬は1日の服用容量を超えてしまった。
自然に目頭が熱くなって、目の前がぼやける。
じ「テオくんっ…、」
もう全部がおかしくなりそうなくらいで
我慢出来ずに、テオくんの部屋に飛び込んだ。
クローゼットを開けて服をかき集める。
全部ベッドに放り投げて、その中に潜り込んだ。
テオくんの匂いに包まれて
少しだけ、すーっと楽になった。
でも間に合わせのテオくんの匂いだけじゃ
耐性がついて、効果がなくなってくる。
気がつくと止められないほどの涙が溢れていた。
ポケットに入ったiPhoneを取り出して
テオくんに『ておくん』とだけLINEを送る。
じ「テオくんっ…はや、くっ、」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!