第96話

思い出
1,259
2018/05/04 01:31
《☆イニ☆side》







最近、テオくんが分からない。







誰よりも近い存在で

誰よりも近い関係でいるはずなのに

不安になるような日が続いている。







いつもはよく喋るのに

急に口数が少なくなったり。







会ってもずっと、iPhoneを見ている。






☆イニ☆
そういえば100本目の動画でさ、







普段自分から話そうとしない俺が

話しかけるぐらいには。






☆イニ☆
俺が復活したばっかで動画撮るのめちゃめちゃ楽しいって言ってたよね、?







思い出話をしているはずなのに

確認をするように、語尾を少しあげた発音になる。






テオくん
え、そうだっけ







そのテオくんの一言で

俺の心臓は一気に動きを速くした。






☆イニ☆
…今も楽しい?







恐る恐る聞く。







テオくんはこんな会話、嫌いなんだろうな。






テオくん
あぁ、まぁ、うん







なんでそんなに濁すの?







暗い話だから?







本当に分からない、







ほら、またiPhoneを見てさ。






☆イニ☆
俺、今でも復活動画みたりするんだよね







それでもめげずに話しかける。






テオくん
なんの?







ドクン、と頭に衝撃が走った。






☆イニ☆
…え、?







テオくんは少しだけ

チラッとこちらを見て、また目をiPhoneに戻した。






テオくん
あぁ、あれね、俺もたまに見るよ







..テオくんは、

俺以外のことで頭がいっぱいなの?







思い出話、嫌いなの?







俺ってただの人数合わせ?







だから思い出なんてなくていいやって

別に知らなくていいやって

そう思ってるの?







いつかテオくんの頭の中から

俺っていう存在、なくなっちゃうの?







そんなの嫌だよ、







ずるいよ、俺ばっかりこんな想い。






☆イニ☆
..ちょっとお腹痛くなってきたからお薬買いに行ってもらっていい?







え、大丈夫?行ってくるね、

そう言った時の心配した顔と笑顔は偽物?







ごめんテオくん、







でも悪いのはテオくんだからね?







いつまでもテオくんが俺のことを忘れないように

" 俺 " という嫌な存在を、

そして思い出を、

一生抱えて生きてほしいから。







後悔してほしいって思っちゃう俺を

どうか後で怒っておいてほしい。







..だからここで、ばいばい。

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