side右手 路地 (回想)
何者かにより引き離された私達、どうしても会いたくて…彼と話してみたくて。
何年も…何年も何年も何年も、探して探して探した。
彼は…どんな顔をしているのだろう__。
そうしてまた何年かあって…
つい1年前、ようやく左手を見つけました。
路地裏で、私は静かに彼を瞳に映した。
遠くの道の真ん中で、彼は楽しそうに笑っていた。
私と見た目はそっくり、なのに…幸せそうだ。
……愛おしい。
さらってしまおうか…
左手の前に出る資格は…ないのかもしれません。
あの幸せそうな顔を…崩してしまう。
…もう左手には会わないでおきましょう。
路地裏に急にテンションが高めな声が響いて、瞬間的に彼の首をつかもうとした。
しかしそれは、ひらりとかわされてしまう。
よくわからない。
中二病の類いだろうか。
彼は左手をその真っ黒な手袋をした手で指差した。
遠くから左手の笑い声が聞こえる。
胸が締め付けられて…苦しい。
左手は警察官に…なっていた…
これは新しい育手が強制しているのでしょうか…
そこで思いついた。
左手を適度な距離で見守り続けられて、会う可能性が格段に低い方法を。
口角が自分でもわかるぐらいに緩んだ。
その怪盗グループに入れていただけませんか___?
side瑠衣 アジト (回想終了)
めんどくさそうに頭を掻く左手。
その様子をみて…なぜだかこっちも苦しくなった。
side大地
俺はその時、逃げた飼い猫を探し当てて、飼い主の方に返していた。
少し太り気味の猫の背を撫でながら、飼い主のおばあさんは微笑んだ。
おばあさんの話をそれとなくかわす。
そんなこんなで毎日過ごしていると…ある日突然。
……彼とぶつかった。
いち早く立って、彼は手を差し伸べてきた。
太陽が逆光になって…眩しい…
彼は目尻を下げて謝罪する。
改めてその人をみると、よく見る警察官の制服を着ていた。
まっすぐに俺を見つめる彼が…直視できないくらいに眩しかった。
彼はきっと冗談半分だったと思う。
その証拠に、真剣に誘っているようには見えない。
縦人はぶんぶん手を振って、反対方向に走って言った。
世界の綺麗なところを…俺は見てきたはずだった。
けどそれと同じくらい…汚いところだって見てきた。
けど…ああいう人は…
…………欲しい。
俺の気が抜けていた…?
いや、気配がなかった。
後ずさりをして、彼を見る。
ニコニコと笑みを浮かべる目の前の人物の瞳は不気味に光っていた。
凄腕のスリか…?
怪盗とか言ってたけど…
何…言ってるんだろう…
褒められているのか…?これは…
どんどんおかしな話になっていく…。
なんで俺なんだろう…
そう、あの時思った。
この輝く笑顔が欲しい。
あんな無垢なもの…見たことない。
人助けをするだけの人生も良かったかもしれない。
けど…俺は手に入れたい、あの綺麗な〝宝石〟を。
side瑠衣 アジト (回想終了)
なんかすげーみんなエピソード濃い…
そうだよな…怪盗は立派な犯罪だ。
その引き金が自分だとしたら…縦人は罪悪感が拭いきれないだろう。
………は?
どういう…ことだ…?













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!