休日明けの月曜日。
予想通り…綾人とは目さえも合わせてくれなかった。
また友達からじゃなくて…まるで知らない赤の他人みたいな存在になっていた。
うん、分かってた。分かっていたんだけど…。
とても苦しい。
優衣は、なんも言わずに隣にいてくれた。本当に感謝している。
でも…………、
「ちょっとごめんね、お手洗いに行ってくる」
涙が溢れそうなので…トイレに逃げ込んだ。
ちゃんと鍵を閉めて…声を殺して泣いた。
綾人は、私が初めて本気で好きになった人。
全力で愛した人。
それが突然いなくなった。
『あのねー、聞いてよ〜』
『マジー?笑える!ハハハッ!』
ちょっとの間、トイレに引きこもっていると誰かが入ってきたようだ。
声からして…2人だろう?
『あー!聞いた!?綾人と、彼女の…凪?別れたってよ!』
『え!?マジ!どっちから振ったの?』
もうそんな事広まっているの…?誰が言ったんだろう?……綾人かな……。
『綾人からだって!まぁ、飽きたんじゃない?w』
『別に、美人という訳でもないし…どこでも居る女だもんねww』
『可哀想に…ww
あなたには叶わないって今分かったのかい?ってねww』
『ハハハッ! 』
黙って聞いていたら、次々と腹立つ言葉が飛んできて頭に来た。
どこでも居る女? 私には叶わない?
告白する根性もないあんた達にとやかく言われる筋合いはない!
ガチャ))
ドアを開くと、その先にいた2人は鏡からこっちに顔を動かした。
まさか、ここに話に出てきた振られた彼女がいるとは思ってもなかっただろう。
『え、あんた……。』
私は、なんも言わずに…睨み付けた。
しかし、目の前にいる2人は焦るところか笑い出した。
「なぁに、盗み聞き?悪趣味ねw」
そう言って見下すような目で私を見つめた。
「別に、盗み聞きするつもりじゃなかったよ。」
「口答えすんなよ、《元》彼女さん?w」
もう1人の女子中学生に、思いっきりお腹を蹴られた。
突然のことで、何が起こったのか分からなかった。
後になって痛みが来て…この状態が理解出来た。
「くっ……!?……っ。」
立ち上がれないような痛みで…床に寝転んだ。
「汚っw」
そんな声が聞こえたが…どうでもいい。
この痛み…明日には痣になっているんだろう。
丸くなる私を…2人は、しゃがんで…髪の毛を掴んだ。
髪の毛抜けてしまうんじゃないか!?と、思うぐらい思っきり引っ張られた。
「前からね、ムカついていたのよ?」
「あんな彼氏も出来て…仲もいい親友もいるんでしょ?調子に乗っているように見えて腹立つのよ〜w」
なんでこうなったんだろう?
調子に乗っている?……言われてみればそうなのかもしれない。
だから、罰が当たったのかな?
「何やってるの!?」
何かも絶望して…罰やらを受け止めようとしていた私の目の前に現れたのは…
「ゆ、……優衣……。」
絶望の中に…どん底に落ちても、私には親友の…優衣がまだ居た。
私の髪の毛を引っ張る女子中学生を見つめると…
優衣は今の状態に追いつけられないのか目を開くばかりだった。
さっきまでもてあそぶような目をしていた女子中学生も、突然のことに固まっていた。
どう言い訳しようか。やばい、やばい。という焦った顔が出ていた。
そんな間にも、優衣はスタスタとこっちに近づいてき…私の頭から手を離しさせた。
「ダメじゃん!!」
響いた言葉。
優衣に、助けられ…嬉しくなった私は顔を上げた。
そうして…こういうつもりだった。
「ありがとう。」
ってーーーー。
口を開く前に気づいた優衣の手…。震えていたー。
怒りなのか?怖かったからなのかは…分からない。
次の瞬間、優衣は………
高笑いしながら私を睨んできた。
咄嗟にバケツを手にする動意に……私は、守りの体型をするのが遅れた。
そのまま…バケツは私に近づいてき…目を強く閉じた。
頭に痛みが走った。
どうしてこんなことをするの?
…優衣ーー。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!