千世が……凪??
突然の事実に受け止められずにいた私。
「びっくりした〜?優衣!w」
中学の時とは、逆の立場になっていた。
あんなに、可愛くて…そんな私でも笑いかけてくれる優しい千世の顔は…どこにもなかった。
「裏切られた気分はどう?」
引っ張る手を離して…頭を撫でてくる千世……
…じゃない…千世じゃなくて凪なんだ……。
「とても…苦しいよね…なんも見えなくなるよね…。」
次の瞬間、頬に電流が走ったような痛みを感じた。
そう、叩かれたのだ。
「それを私は、体験したの…。貴方のせいでね♡」
私の頬を叩いた手で…襟を掴む。
そして、微笑むのだ。
「復讐するために…違う声を練習して…整形もして…性格も変えて…。」
大変だったなぁ。と凪は、呟きながら私を思いっきり蹴り飛ばす。
「うっ…!……くっ……っ!」
「でもね、苦い思い出のある泣きぼくろだけは残したよ?」
苦い思い出というのは…、中学の時 私が言った言葉や…綾人との思い出だろう……。
「気づいてくれるかなぁ?と思ってた。 でも、気づかなかったねw」
黒板消しを手にすると、私の頭の上でバンバンと粉を落とした。
そうしている間にも私は、絶望しながら凪の話に耳を傾けるだけだった。
「あ、千世として優衣と過ごして…嬉しかったこともあるよ!」
しゃがんで…私の視線と合わせて笑いながら言う。
「私の泣きぼくろ、可愛いって言ってくれて…とても嬉しかったよ」
口角は上げているけど…目は悲しそうに見えた。
しかも、顔は整形していて…凪じゃなく千世の顔だ。
そうなると、凪とは思えなくて…抱きしめたくなるのを耐える。
違う…この人は、千世じゃない。千世の姿をした悪魔の……凪だ。
それなのに…ごめんなさい。と声に出してしまう。
「ご、ごめんなさい…。」
「うん、許すわけないでしょ♡」
今度は逆の頬を叩かれた。さっきよりも強かった。
今までのやり取りを見ていたみんなは、止めようともせず…逆に知らんぷりともしなかった。
千世…いや、凪と共に私を見下し…嘲笑っていたんだ。
そのことから、ここに私の味方は…居ないんだ。と思い知られた。
「あっ……。な、なんで…両親が離婚したこと知ってるの…?」
「あ、あれれ〜??気づかなかったの?w」
驚いた顔をしながら、凪は私のバッグについている白熊のキーホルダーを指差した。
「ま、まさか…!?」
そんな事あるのか!?と思いながら、キーホルダーを触ると、お腹あたりに違和感を感じた。
早速…頭と、体をちぎって中から違和感の正体を取り出すと…盗聴器が入っていたのだと分かった。
「あ、あぁ……ぁああ……」
フフっと小さく笑いながら凪も、ポケットから盗聴器を取り出した。
「家の中の会話も…全部聞いていたよ!♡」
鳥肌が立った。
凪は、私に復讐をしに戻ってきたのだと改めて実感した。
「あ、黒板の奴も私が書いたよ!!♡」
凪が怖い…。何をするのか分からない。
千世に化けて私に近づいてきたなんて…。
復讐って…私をいじめる気?
嫌だ…嫌だ嫌だ!!
私は、身を小さくして怯えた。
〜凪side〜
なんで…目の前にいる優衣は、怯えているのだろう?
そんなに怯えることないのにね♡
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
必死に土下座して謝る優衣。
ごめんね、許すわけには行かないんだ。
私はあんたに人生を壊された。
裏切って…私から何かも奪っていったの。
だから、今度はあんたの番ね!♡
思っきり可愛がってあげるから、安心してね〜
優衣の頭を蹴り…髪の毛を掴む。
優衣は、もう涙を流していた。
「ちょっとちょっと〜!泣くのは早いよ!」
私は、優衣の震えがおさまるように精一杯笑ってみせた。
それなのに…優衣は、笑ってくれないのです。
寂しいなぁ…。悲しいなぁ…。
それでも私は、諦めないで話しかけるよ!
「ねぇ……、優衣。
これからもずっと…ずっと親友でいようね!♡」
もう親友じゃないなんて言わせない…。
やっと…本物の親友になれるね!!!!!!!!!!
私達は、やっと《親友》の意味を…分かった気がするよ♡
〜END〜
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。