次の日から、いじめは始まった。
登校中は、基本荷物持ち。
机に来たら、落書きがあり…椅子には画鋲が並んであった。
いつも…いつも…それを雑巾で拭き…画鋲を拾った。
授業中は、消しカスを投げられる。
昼休みが1番の地獄だ。
弁当は、ゴミ箱に捨てられ…それを拾って食べて…
みんなが見えないところで…暴力を黙って受けた。
なんも言わないで…じっとすれば自然と無くなると思っていたが…無くなることは無かった。
今日も、トイレでいじめられるのか。
死んだ目をしている私に対して、キラキラとした目をしている優衣。
優衣は、もっとみんなと話すようになり…リーダーみたいな存在になった。
優衣の彼氏も…私の元彼…〈綾人〉だとつい最近知った。
知った時は…あの時夕方に電話した私が恥ずかしく思えてきた。
あの時はもう…優衣の隣は綾人がいたんだなぁ。
2人で…すすり泣きながら震える声で話す私を…馬鹿にして笑っていたのかなぁ。
「何、ぼーっとしてんの?w」
そんなことを思い出している間にも暴力は始まっていた。
ずっと受けてきたから…慣れてしまった。
「なんか喋ってくれる?w」
綾人は、私が優衣からいじめられているのを知っているけど知らんぷりしている。
知るかよ、あんな人の事。というような目で私を見て…通り過ぎて行くのだ。
「無視すんなよ」
あ、優衣の話聞いてなかった。
顔を上げると、足で顔を思っきり蹴られた。
その勢いで…床に倒れてしまった。
「すいません……」
小さな声で…謝る理由なんて知らないけど…
とりあえず…謝る、謝る。
そんな事をまだ信じている私が馬鹿なんだと思うけど…
私はまだ……優衣とは親友だと思っている。
「優衣…」
これが最後の言葉だ。
それでも耳を傾けてくれなかったら…諦めよう。
ああ、前もそう言って結局諦めきれなかったけど。
「私達…まだ親友だよね?」
そう言うと、複数の笑い声が響く。
「私…優衣のこと大好きだよ?」
「ドMじゃね?」「うわぁ、引くわ」という声も耳に入る。
優衣の顔は、もう前の優しい顔には戻らなかった。
「私、なんかして優衣を変えてしまったのなら…謝るよ。ごめんなさい。」
痣でいっぱいの手で…優衣の足を掴む。
「うわっ…触んなよ!」
掴む手を引き離し…その手の上に足を載せた。
それも…とても痛くて…うめき声をあげた。
「だーかーら、あんたを親友と思ったことないの!wずっと…あんたのこと見下してきたからww」
「そっか…そうだったんだね。」
何故か…その時の私は、泣くと言うより微笑んでいた。
もう傷つきすぎて壊れてしまったのかな?
「ねーね、1ついい?あんたの顔のことだけど…左頬の泣きぼくろ、ブサイクだよねw」
泣きぼくろと言われば…前、元彼が「可愛くて僕は好き!」と言われたことをまだ思い出す。
あの時は…とても…とても幸せだった。
大好きな彼氏や…仲の良かった親友の優衣から…
突然裏切られて…あぁ笑ってしまうね。
胸が苦しいのならば…目を閉じて、なんも考えずに眠ってしまおう。
そんな日々が続いた1ヶ月半後、私は転校した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!