夏ももうすぐ終わりを告げる。
…まあ当たり前でごく普通の事なんだけどね。
…
「そうだ!ミクさん!夏祭りに行きませんか!?」
「なつ…まつり?」
「えと…屋台見て回ったり、花火を見るやつで」
「その…良ければなんですけど…これ…」
「…?これを着ろと言う事ですか?」
「あっ…無理は言いませんっ…すみませんね」
…
俺は今、ミクとした夕方の会話を思い返していた。
俺は俯く。
目の前のミクは見事に着物を着こなして、髪も綺麗に纏めている。
俺は興奮のあまり頭を上下に激しく振る。
俺はミクとしばらく歩いて回った。
俺はミクと話しつつもスマホに目をやる。
そろそろかな…
俺はミクの手を引く。
そのまま手を引いて俺達は人混みを抜け出した。
ミクさんが顔を上げた時、花火が打ち上がり始めた。
ミクは目を輝かせたまま俺の方を向く。
ミクはにっこりと微笑んだ。
今日の事は絶対忘れないと心に誓うレベルで最高の日だな。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!